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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.06.17 Sun » 『ブラッドベリ年代記』(ROC版)

【前書き】
 以下は2010年4月9日に書いた記事である。誤解なきように。


 クリストファー・コンロン編のリチャード・マシスン・トリビュート・アンソロジー『ヒー・イズ・レジェンド』の邦訳が小学館文庫より刊行された。
 原書は、この日記でも何度か書いたホラー系小出版社ゴーントレットの豪華本。こういう本の邦訳が出るとは、ふつうなら考えられない。マシスンというよりはキング&ヒル親子のご威光という気がしないでもないし、抄訳という点が残念だが、まずはめでたい。

 そのマシスンが師匠にトリビュート作品を寄せているアンソロジーがあるので紹介しよう。ウィリアム・F・ノーラン&マーティン・H・グリーンバーグがレイ・ブラッドベリの作家デビュー50周年を祝って編んだ The Bradbury Chronicles (ROC, 1991)である。もっとも、当方が持っているのは、例によって翌年同社から出たペーパーバック版だが。

2010-4-9(Bradbury Chronicles)

 編者のひとりノーランは、ブラッドベリ・ファンNo.1とでもいうべき存在で、ブラッドベリの旧友であるばかりか、ブラッドベリ研究者としても名を馳せている。トリビュート・アンソロジーを編むにあたって、これ以上の人選はない。そしてノーランは、人脈を活かして期待にたがわぬアンソロジーを作りあげた。

 ノーランの序文、アイザック・アシモフのはしがき、ブラッドベリの蔵出し短篇(追記参照)、ブラッドベリ自身のあとがきのほか、21人の作家がトリビュート作品を寄せている。意外な人が意外な作品をネタにして書いていたりもするので、整理して書いてみよう。

キャメロン・ノーラン 『たんぽぽのお酒』の続篇 *ノーラン夫人
エド・ゴーマン 「こびと」の続篇
ジェイムズ・キスナー 『火星年代記』の新エピソード
チャールズ・L・グラント 『何かが道をやってくる』の続篇
リチャード・マシスン
チャド・オリヴァー
ウィリアム・レリング・ジュニア 「アイナーおじさん」の続篇
チャールズ・ボーモント 1963年発表作の再録
ノーマン・コーウィン
ロバート・ランネス 『火星年代記』の新エピソード
リチャード・クリスチャン・マシスン  「見えない少年」を下敷きにした作品 *マシスン令息
チェルシー・クイン・ヤーブロ  「集会」の続篇
ブルース・フランシス  「みずうみ」の続篇
クリストファー・ボーモント *ボーモントの遺児
グレゴリイ・ベンフォード  『華氏451度』の続篇
ジョン・マクレイ  『死ぬときはひとりぼっち』の続篇
J・N・ウィリアムスン
F・ポール・ウィルスン  「十月のゲーム」を下敷きにした作品
ロバート・シェクリー  『火星年代記』の新エピソード
オースン・スコット・カード  『たんぽぽのお酒』の続篇
ウィリアム・F・ノーラン  『たんぽぽのお酒』の続篇

 注記がないものは、特定の作品へのトリビュートではなく、ブラッドベリの作風に似せたパスティーシュだと思ってほしい。
 
 集中ベストはオリヴァーかコーウィンの作品。前者はカリフォルニア・グループの一員、後者は1950年代にブラッドベリの作品をラジオに乗せた仕掛け人とあって、ブラッドベリとは因縁あさからぬ仲。ブラッドベリに対する熱い思いが伝わってくる秀作を書きあげた。

 上記2篇に代表されるように、特定の作品に対するトリビュートよりは、漠然としたパスティーシュのほうが出来がいい傾向がある。
 それでもシェクリーの『火星年代記』などは、ブラッドベリ本人が書いたといっても通りそうなほどだし、ノーラン夫人の作品もみごとな出来ばえ。玉石混淆の感は否めないが、総じて楽しめる本である。(2010年4月9日)

【追記】
 “The Troll”と題された軽いファンタシー。1950年に書かれた未発表作に手を入れたものだという。



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