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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.02.21 Thu » 『ジャック・ヴァンス傑作選』

 ヴァンスの傑作選といえば、そのものズバリの題名の本が出ている。The Best of Jack Vance (Pocket,1976) がそれ。ヴァンスの前書き、バリー・N・マルツバーグの序文つきだが、どちらも短すぎて読み応えはない。ただし、各篇に作者の覚え書きがついていて、そちらは面白い。

2009-7-25(Best of Vance)

 目次はつぎのとおり。例によって発表年と推定枚数を付す――

1 光子帆船25号 '62 (70)
2 Ullward's Retreat '58 (40)
3 最後の城 '66 (170)
4 アバークロンビー・ステーション '52 (180)
5 月の蛾 '61 (100)
6 Rumfuddle '73 (160)

 傑作選とはいいながら、The Worlds of Jack Vance との重複を避けたのか、いまひとつ物足りないラインナップ。
 ジェリー・ヒューエット&ダリル・F・マレットの書誌 The Work of Jack Vance の記述によれば、「ココドの戦士」と“Alfred's Ark”の収録が予定されていたのだが、出版社の意向で割愛されたとのこと。
 それでも「月の蛾」は収録されている。

 未訳作品について触れておくと、2は都市化の弊害をテーマにしたいかにも50年代という風刺SF。Author's Choice という作者自選作アンソロジー・シリーズにヴァンスがこの作品を選んでいて驚いたことがある。というのも、あまりヴァンスらしくないし、出来もよくないからだ。出来の悪い子ほど可愛いのか、それとも、ほかに再録の機会がない作品で稼ごうとしたのか。作者自選というのは、どうも信用が置けない。

 6は、ひょっとするとダン・シモンズ《ハイペリオン》シリーズの霊感源のひとつかもしれない。
 小型の超空間ゲート(要するに「どこでもドア」ですね)が実用化され、人類が宇宙全体に散らばっている未来。主人公ギルバート・デュレイは、自然のままの惑星を私有し、家族4人だけで牧歌的な生活を送っている。あるとき、仕事を終えて地球から自分の星へ帰ろうとすると、すべてのゲートが閉ざされているのに気づく。いったいだれの仕業なのか? 惑星に孤立した妻エリザベスと娘3人は無事なのか?
 というわけで、主人公が右往左往しながら真相を探っていくミステリ仕立てのノヴェラ。超空間ゲートというガジェットがはらむ可能性を追求した本格SFだが、最後に明かされる真相には唖然とする。じつは主人公やその妻の名前が伏線になっているのだが、それに気づく読者はいないだろう。(2009年7月25日)


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