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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.02.18 Mon » 『八つの幻影と魔法』

 ヴァンスがらみの話をつづける。

 ヴァンス傑作集的な意味合いの本に Eight Fantasms and Magics (Macmillan, 1969) というのがある。もっとも、当方が持っているのは、例によって1970年にコリアーから出たペーパーバックだが。

2009-7-18 (Eight)

 短い「まえがき」につづき、以下の作品が収録されている。例によって発表年と推定枚数を付す――

1 奇跡なす者たち '58 (205)
2 五つの月が昇るとき '54 (40)
3 Telek '52 (185)
4 Noise '52 (35)
5 新しい元首 '51 (70)
6 Cil '66 (70) *《滅びゆく地球/キューゲル》
7 スフィアーの求道者ガイアル '50 (120) *《滅びゆく地球》
8 無因果世界 '57 (25)

 未訳のうち3は、分類すれば超能力ものということになるだろう。表題のテレックはテレキネシスの略で、この場合は超能力者を意味する。彼らが貴族階級として君臨している未来を舞台に、その圧政を打破しようとする者たちの活躍が描かれる。
 じつはヴァンスの長篇はこのパターンが多い。つまり、厳格な階級制度が敷かれている未来社会を舞台にした革命の物語。この作品は、それらの原型と考えていいだろう。とはいえ、当方はこの系統にあまり魅力を感じない。

 4は異星に不時着した宇宙船の話。形はSFだが、内容は純然たるフェアリー・テールで、ヴァンスが手の内を見せた感のある短篇(追記参照)。
 6は《キューゲル》ものの痛快篇。

 簡単にいえば、ヴァンス作品のショーケース的な作品集である。内容はかなりいい。(2009年7月18日)

【追記】
 この後ヴァンス傑作集『奇跡なす者たち』(国書刊行会、2011)に本邦初訳作品として収録された。訳題は「音」である。


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