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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.02.17 Sun » 『ジャック・ヴァンスのいろいろな世界』

【承前】
 ジャック・ヴァンスの短篇集 The Worlds of Jack Vance (Ace, 1973) を紹介しよう。じつは、畏れ多くも浅倉久志氏からいただいた本なのだ。

2009-7-17(Worlds of Vance)

 話は20年ほど前にさかのぼる。あるとき浅倉さんから電話があって、今夜衛星放送でやる映画、ヴィスコンティ監督の「山猫」を録画してくれないかと頼まれた。あとでわかったのだが、浅倉さんは当時ポーリン・ケイルの映画評論集『映画辛口案内』(晶文社)を翻訳されていて、そのなかでこの映画がとりあげられていたのだ。いまとちがってソフトが手にはいりにくかったのだが、浅倉さんは論じられる映画の現物を極力観て(あるいは観直して)おこうとされていたのだった。

 ともあれ、偉大な先輩の役に立つのがうれしくて、録画したVHSテープを翌日お送りしたら、そのお礼ということでこの本をいただいたのだ。もちろん、当方がヴァンス・ファンだと知ってくださっていたからだ。ああ、ヴァンス・ファンでいてよかった。

 目次はつぎのとおり――

保護色
月の蛾
新しい元首
悪魔のいる惑星
無因果世界
ココドの戦士  *《マグナス・リドルフ》
The King of Thieves  *同上
とどめの一撃  *同上
ノパルガース

 一見、ヴァンス傑作選のように思えるが、じつはエースのダブルで出た The World Between and Other Stories (追記参照)と The Brains of Earth を合わせ、宇宙探偵《マグナス・リドルフ》シリーズから3篇選んできて加えただけの安易な編集。本書のための序文もついてないし、手抜きの感は否めない。もっとも、こういう文句をいう読者は当方くらいかもしれないが。

 その代わり質は高くて、いずれもカラフルなヴァンス流宇宙小説。とりわけ「月の蛾」、「新しい元首」、「無因果世界」あたりは、ヴァンス傑作選に指定席を約束されている。国書刊行会から刊行が予定されている作品集『奇跡なす者たち』にもはいると睨んでいるのだが、予想は当たるだろうか(追記2参照)。(2009年7月17日)

【追記】
 このダブル・ブックについては2012年4月18日の記事で紹介した。

【追記2】
 予想どおり「月の蛾」と「無因果世界」は収録された。「保護色」もはいった。
 聞くところによると、「新しい元首」は、ほかの本にはいる予定があったので見送られたとのこと。しかし、その本はまだ出ていない。関係者には猛省をうながしたい。

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