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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.06.26 Tue » 『モローという名の島』

 オールディスの擬似科学ロマンス風作品といえば、忘れてならないのが Moreau's Other Island (Cape, 1980) だ。もっとも、当方が持っているのは、翌年ポケットから出たアメリカ版ペーパーバックで、こちらは An Island Called Moreau と改題されている。

2009-7-7(Island)

 表題からわかるとおり、作者が敬愛するH・G・ウェルズの『モロー博士の島』(創元SF文庫)をリメイクした作品。これまたモロー博士の島が実在したという設定で書かれており、原作との密着度は非常に高い(批評家のデイヴィッド・プリングルは、再話といい切っている)。

 ときは1996年。第三次世界大戦がはじまってまもないころ。アメリカの国務次官カルヴァート・ロバーツを乗せたスペースシャトルが南太平洋に墜落する。九死に一生を得たロバーツは、漂流の末、ある絶海の孤島へたどり着く。そこはモーティマー・ダートと名乗る科学者が、半人半獣の住民たちを支配する不思議な場所だった。
 ダートによれば、ウェルズの小説に出てくるモロー博士には、マクモローという実在のモデルがおり、小説に登場する獣人たちの末裔が、この島の住民なのだという。ロバーツはアメリカ政府と連絡をとりたいと申し出るが、ダートはそれを聞き入れない。
 やがて恐るべき事実が判明する。ダートは遺伝子操作で新人類を創りだそうとしており、人体実験ができないので、獣人を使って実験をくり返しているのだ。そして獣人たちの叛乱が起こって……。

 ニュー・ウェーヴの闘士だった作者らしく、タブーブレイキングな内容になっている。
 たとえば、ダートがサリドマイド障害者として設定されていること。腕と脚がなく、それを補うためにサイボーグとなっており、用途に応じて手足や体をとり替える。種村季弘の『怪物の解剖学』のテーゼを具現したような人物だ。
 人魚のようなアザラシ人間が出てくるが、これもサリドマイド障害者で、日本人ということになっている。その名前が面白い――

女性 Lorta, Satsu
男性 Saito, Harioshi, Halo, Yuri

 どこから引っぱってきたのだろうか。

 余談だが、本書はむかしなつかしい《タイムスケープ・ブックス》の1冊で、活字が細かいせいもあるが、158ページにおさまっている。短いのは美徳だなあ。(2009年7月7日)

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