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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.08.22 Wed » 「ヒルビリー・ジョンの伝説」

 以前マンリー・ウェイド・ウェルマンの《シルヴァー・ジョン》シリーズについて書いた。ギターをかかえてアパラチア山地を放浪する風来坊が、行く先々で出会う怪異をつづったシリーズで、飄々とした味わいが高く評価されている。シルヴァー・ジョンという名前は、そのギターに銀の弦が張ってあることからきており、これが魔物退治に役立つのだ。

 このシリーズは1970年代に映画になったのだが、わが国ではTV放映をふくめて未公開。もちろん当方も見たことがなかったが、今回、添野知生氏のご厚意で見ることができた。先の日記を読んで、わざわざアメリカからヴィデオを取り寄せ、ついでに当方の分もDVDにダヴィングしてくださったのである。まずは感謝するしだい。

 その映画が The Legend of Hillbilly John である。公開を1973年としている資料が多いが、じつは複雑な事情があり、そうとはいいきれない(この点については後述する)。監督ジョン・ニューランド。脚色メルヴィン・レヴィ。出演ヘッジ・ケーパーズ、スーザン・ストラスバーグ、アルフレッド・ライダー他。と資料を書き写しただけで、詳しいことはなにひとつ知らないのだが。

 ウェルマンの原作から発表順で第一話「ヤンドロー山の頂上の小屋」と第二話「おお醜い鳥よ!」を採り、オリジナル・エピソードを加えてオムニバス風に構成した87分の映画。
 正直いって出来のほうはイマひとつで、まあこういう映画もあることさえ憶えておけばいいと思う。
 
 最大の問題は脚本、とりわけオリジナル・エピソードにある。ジョンが銀の弦を作る経緯を描いた冒頭のエピソード、南部の綿花地帯でヴードゥーがらみの事件に書きこまれる最後のエピソード、ともに原作の味わいを殺してしまっている。ジョンは来歴不明の風来坊だから魅力的なのだし、その物語は舞台がアパラチア山中だから説得力を持つのだ。

 もうひとつがっかりしたのはロケーション。アパラチア山地の雄大な風景が見られるかと思ったら、大半は安っぽいセット撮影か、その辺の田舎の風景であった。低予算だから仕方ないにしても、シリーズの大きな魅力が消えてしまっている。
 
 強いて美点をあげれば、オリジナルの挿入歌がなかなかいいのと、怪鳥のぎごちない人形アニメーションに素朴な味わいがあることか。
 あんまり悪口はいいたくないが、原作者のウェルマンが出来を不満に思っていたというのもうなずけるのであった。

蛇足
 問題の製作年について、ウェルマンの書誌から関連の記述を書き写しておく。ご参考までに。

WHO FEARS THE DEVIL [freely adapted from A39 & A142]
film adaptation by Harris/Two's Company, directed by John Newland and starring Susan Strasberg, Denver Pyle and Percy Rodriguez. Release in 1972; re-edited and re-released in 1975 as THE LEGEND OF HILLBILLY JOHN. Also released as MY NAME IS JOHN.

 文中のA39 とA142 は上記シリーズ第一話と第二話をさす。(2009年4月17日)

【追記】
 〈ミステリマガジン〉2007年2月号が「モンスター大集合」という特集を組んだとき、小山正氏が「ミステリ・ファンに捧げるモンスター映画10選」という一文を寄せ、「抒情豊かな民俗派モンスター」としてこの作品をとりあげていた。

 さて、ウェルマンといえば、もうひとつ紹介したいシリーズがあるのだが、元の日記の流れのせいで、すこし遠まわりしなくてはならない。つぎから話題が変わるが、そのうちウェルマンの話になるので、そのつもりでお読みください。


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