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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.04.30 Tue » 『大地の妖蛆』

 天使の贈り物その2は、Worms of the Earth (Donald M. Grant, 1974) である。小型ハードカヴァー、233ページ。発行部数2500。

2009-3-25 (Worms of the Earth)

 表紙絵はデイヴィッド・アイルランド。表題作を題材にしているが、まったく同じ構図でヴァージル・フィンレイがイラストを描いており、それにくらべるとだいぶ見劣りがする。とはいえ、白黒のイラストが4枚はいっており、こちらは迫力がある。

2009-3-25 (Worms 3)

 当方はこの本をペーパーバック化したエース版(1979)を所有していた。こちらの表紙絵はサンジュリアンの手になるもの。

2009-3-25 (Worms of the Earth, Ace )

 両者をくらべてみたところ、版面がまったく同じなので、エース版はグラント版をそのまま写真複製して版下にしたとわかった。もちろん、イラストもそのまま使われている。エース版は紙が悪くて、すでに壊れかけているので、この本を譲っていただいたのはありがたいかぎり。

 これはピクト人の王ブラン・マク・モーンのシリーズを集大成したもの。同じ趣旨の作品集は1969年にデルから Bran Mak Morn という本が出ていたが、本の厚みを出すために、コーマック・マク・アートというべつのヒーローを主人公にした作品が1篇混ざっていた。本書はそれを抜いたもので、ブラン・マク・モーンもの集大成としては過不足ない出来となっている。
 収録作品はつぎのとおり――

Foreword  *短い詩とハワードの手紙から抜粋した文章で構成されている
「滅亡の民」  *関連作品 ブラン・マク・モーンは登場しない
Men of Shadows
「闇の帝王」  *《キング・カル》との相乗り作品
A Song of Race  *詩
「大地の妖蛆」
Fragmet  *未完作品の草稿
The Dark Man  *《ターロー・オブライエン》との相乗り作品

 グレン・ロードがかかわっているので、未完作品は未完のまま収録している。

 このシリーズは数がすくないので、他のヒーローとの相乗り作品を入れても以上でほぼすべて。マニアックきわまる編集のワンダリング・スター版 Bran Mak Morn the Last King (2001) でも、未完の草稿やハイスクール時代の習作が増補されているだけ。
 そのわりに令名が轟いているのは、ひとえに「大地の妖蛆」のおかげである。なにしろハワードの最高傑作に推す声もあるくらいで、夢魔的な迫力に満ちた作品。当方もハワードのベスト3にはかならず入れるだろう。

 未訳の“Men of Shadows”は、1926年に書かれたシリーズ第1作だが、〈ウィアード・テールズ〉に投稿して没となった。
 読んでみると、それもしかたなく思える。ローマ軍団に所属する北欧人の戦士が敵対するピクト人に捕まって、彼らの歴史を聞かされるというのが骨子だが、戦闘場面と古老の語りだけで構成されており、向こうの大衆小説がなによりも重視する「葛藤」に欠けているからだ。要するにアマチュアくさい習作というほかない。
 逆にいえば、ハワードがわずか4年で作家として長足の進歩をとげた証左となっている。(2009年3月25日)

【追記】
 グラント版のハードカヴァーは、ハワードの原稿に忠実な版とされていたが、宗教や人種に関する記述が勝手に削られていることが最近の研究で判明し、その信頼性が揺らいでいる。

 さて、ハワードの話はいくらでもつづけられるが、月も替わることだし、話題もがらりと変えよう。乞御期待。


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