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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.04.27 Sat » 『妖虫の谷その他』

【承前】
 パンサー・ブックスの Skull-Face Omnibus 第2巻は、The Valley of the Worm and Others (1976) と題されている。
 当方が最初に手に入れたハワードの原書がまさにこれ。31年前、御茶ノ水駅前にあった三省堂仮店舗のワゴンから拾いだした。当時はパンサーやコーギといった英国のペーパーバックがこういうところにたくさん転がっていて、その恩恵にあずかったものだ。似たような経験をされた方も多いのではないだろうか。

 表紙絵はクリス・アキレオスが担当しており、集中の「妖虫の谷」を題材にしている。

2009-3-22 (Valley)

 第1巻がオーソドックスなホラー短篇集だったのに対し、この巻は秘境冒険小説の色合いが濃くなっている。ダーレスの前書き、ハワードの詩、ラヴクラフトの追悼文という3点セットのあと、つぎのような作品が収録されている――

①「アシャーバニパルの炎宝」
② A Man-Eating Jeopard 《バックナー・J・グライムズ》
③「大地の妖蛆」 《ブラン・マク・モーン》
④「闇の帝王」 《ブラン・マク・モーン+キング・カル》
⑤「妖虫の谷」 《ジェイムズ・アリスン》
⑥ Skull in the Stars 《ソロモン・ケイン》
⑦ Rattle of Bones 《ソロモン・ケイン》
⑧「死霊の丘」 《ソロモン・ケイン》
⑨「はばたく悪鬼」 《ソロモン・ケイン》

 未訳作品について簡単に触れておくと、②はユーモア・ウェスタン。これだけほかの作品と相当に毛色がちがう。プライスの回想記のなかで激賞されているので収録されたのだろうが、分冊のせいで、その辺の事情がわかりにくくなっている。当方も随分とまどった。主人公のミドルネームはジェオパーディというのだが、これがある猛獣の名前と似ていることが伏線になっている。

 ⑥から⑨は《ソロモン・ケイン》シリーズに属す作品だが、アフリカを舞台にした⑧と⑨とはちがい、未訳の⑥と⑦はイングランドとドイツの田舎が舞台。〈剣と魔法〉風味のアフリカ篇とはちがい、地味なオカルト・ハンターもので、勇んで読んでがっかりした憶えがある。ちなみに、⑥は同人誌〈ローラリアス〉創刊号(1978)に邦訳がある。
 《ソロモン・ケイン》シリーズは近いうちに全訳が出る予定があるそうなので、このあたりにしておこう。

蛇足
 当方が最初に読んだハワードの作品は、角川文庫から出ていた矢野浩三郎編のアンソロジー『怪奇と幻想1 吸血鬼と魔女』(1975)に収録されていた「妖虫の谷」だった。これが非常に面白くて、一発でハワード・ファンになってしまった。
 古代の戦士が邪神を滅ぼす話だが、そのための強力な毒を得るために猛龍を倒すくだりがある。のちに《コナン》シリーズの「紅い封土」を読んだとき、このくだりが流用されていて驚いたものだ。ハワード流の創作方法を意識するようになったのは、これが原因だと思う。
 ちなみにこの邦訳は小菅正夫訳だが、〈ミステリマガジン〉初出時は「妖魔ケ谷」と題されていた。ほかにも山崎紀子訳と夏来健次訳があって、前者は「妖虫の谷」、後者は「妖蛆の谷」と題されている。
 当方は基本的に最新の訳題に準ずるのだが、この本に関しては思い入れを優先した。だから①も「アッシュールバニパル王の火の石」ではないのである。(2009年3月22日)

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