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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.04.25 Thu » 『暗黒の人オムニバス』

 昨日のつづき。
 ハワードの The Dark Man and Others はイギリスのパンサー・ブックスからペーパーバック版が出ていて、当方はそれを所有していた。ただし、2分冊になっていて、The Dark Man : The Dark Man Omnibus: Volume 1(1978)、The Dead Remember :The Dark Man Omnibus: Volume 2 (1979) と題されている。

2009-3-17 (Dark Man 2)
2009-3-17 (Dark Man 1)

 表紙絵の画家がちがっており、それぞれピーター・ジョーンズとジョー・ペンタゴンが担当している。2の表紙絵は、まるっきり永井豪のデビルマンで面白い。

 発行人オーガスト・ダーレスの短い序文をふくめて、親本の全文を収録しているが、確認したら作品配列がすこしちがっていた。どうも《クトゥルー神話》関連作品を下巻にまとめようとした節がある。

 未訳はつぎの6篇――

①The Voice of El-Lil
②The Dark Man
③The Gods of Bal-Sagoth
④The Man on the Ground
⑤In the Forest of Villef`ere  註 `e は本来アクサン
⑥Th Hyena

 ①は「失われた種族(ロスト・レース)もの」と呼ばれるタイプの秘境冒険小説。ソマリア奥地に古代シュメール文明の生き残りがいて、そこに白人冒険家が迷いこむ話。シュメール人は故郷から持ってきた翡翠の銅鑼を神器として崇めていて、表題の「エル・リルの声」は、神秘の力を秘めたその銅鑼の音のことである。典型的な読み捨てパルプ小説で、ハワードの作家としての凡庸さがきわだつ。やっぱり、この人は〈剣と魔法〉を書かないと駄目だね。

 ②と③はその〈剣と魔法〉で、さすがに面白い。どちらもアイルランド人の無法者ターロー・オブライエンを主人公としているが、②は《ブラン・マク・モーン》シリーズとの相乗り作品になっている。というのも、このシリーズの時代設定は11世紀ごろだが、3世紀ごろの英雄だったブランがピクト人の崇める神として登場するからだ。表題の「暗黒の人」はブランの像のことで、この像をめぐって物語が展開するのである。

 ④は西部劇と幽霊小説を混ぜあわせた小品。西部劇に本格的に進出を図ったころ、その小手調べとして書いた実験作だと思われる。
 
 ⑤と⑥は両方とも凡庸な人狼もの。⑤は中世のフランス、⑥は現代のアフリカが舞台である。
 ちなみに、⑥は〈ウィアード・テールズ〉に二番めに売れたが、掲載は6番めになったといういわくつきの作品。出世作「密林の人狼」をふくめて、初期のハワードは同工異曲の作品ばかり書いていたわけだ。(2009年3月17日)




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