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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.08.26 Sun » 『剛勇の谺 第二集』

 前回につづいて、カール・エドワード・ワグナー編のヒロイック・ファンタシー・アンソロジーを紹介する。Echoes of Volor Ⅱ (Tor, 1989) だが、当方が持っているのは、例によって2年後に出た普及版ペーパーバックだ。

2009-3-2(Echoes 2)

 当方はアンソロジーを何冊か編んでいて、よくマニアックだといわれるのだが、自分ではマニアックだとは思っていない。これは謙遜でもなんでもなくて、はるかにマニアックなアンソロジーをふだん目にしているからだ。その好例がこの本である。

 まずは簡略化した目次を見てもらおう――

Ⅰ ロバート・E・ハワード
 The Frost King's Daughter
 氷神の娘

Ⅱ C・L・ムーア
 An Autobiographical Sketch of C.L.Moore (エッセイ)
 スターストーンの探索 C・L・ムーア&ヘンリー・カットナー
 暗黒界の妖精 C・L・ムーア&フォレスト・J・アッカーマン
 The Genesis of an Invisible Venus: Afterword to “Nymph of Darkness” フォレスト・J・アッカーマン(エッセイ)
 The `NYMPH' o' ManiAck フォレスト・J・アッカーマン(エッセイ)
 Foreword to “Werewoman” サム・モスコウィッツ(エッセイ)
 狼女 
 Foreword to “Song in a Minor Key” サム・モスコウィッツ(エッセイ)
 短調の歌

Ⅲ リイ・ブラケット&レイ・ブラッドベリ
 赤い霧のローレライ

Ⅳ マンリー・ウェイド・ウェルマン
 Hok Visits the Land of Legends
 Untitled Hok Fragment

 じっさいは各部の冒頭にワグナーの序文がついている。

 さて、目次を見ただけで、この本がいかにマニアックかわかるだろうが、もうすこし説明を加える。

 第一部にはハワードの短篇がふたつ収録されているが、このふたつは実質的に同じものである。
 ハワードは《コナン》シリーズの二番めに「氷神の娘」“The Frost-Giant's Daughter” という作品を書いたのだが、これは〈ウィアード・テールズ〉に掲載を拒絶された。そこでハワードは、主役の名前をキンメリアのコナンからアクビタナのアムラに変えたうえで没原稿をタイプし直し、題名をすこしだけ変えて、あるファンジンに送った。この作品はさらに “Gods of North” と改題されてそのファンジンに載ったのだが、この本はその両方のヴァージョンを載せているのだ。したがって、主役の名前と細かい字句のちがいをのぞけば、なにからなにまで同じというわけ。
 ちなみに「氷神の娘」は、ディ・キャンプの手が加わったものが流布していて、ハワードのオリジナル・ヴァージョンは永らく陽の目を見なかった。そこで執念の人ワグナーは、ここにオリジナル・ヴァージョンを公開したのだった(ただし、オリジナル・ヴァージョンは少部数の豪華限定版に収録されたことがあるので、これが初出ではない。為念)

 ありゃ、ハワードの説明だけで長くなってしまった。つぎの岩につづく。(2009年3月2日)

【追記】
 ディ・キャンプの手の加わっていないヴァージョンの「氷神の娘」は、《新訂版コナン全集》第1巻『黒い海岸の女王』(創元推理文庫、2006)に訳出した。


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