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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.10.15 Mon » 「地底潜艦」のこと

【承前】

 当方が大学SF研にはいったころは、ちょうどベイリー小ブームの時期と重なっていた。ファンジンを作ろうと思ったとき、その翻訳を載せようと思うのは自然な流れだった。
 似たようなことを考えたファンはたくさんいて、当時の翻訳系SFファンジンは、ベイリーの翻訳を競うように掲載していた。さすがに「マニアのアイドル」といわれただけのことはある。

 数すくない手持ちのアンソロジーのなかに“The Radius Riders”という40枚ほどの短篇があって、これがなかなかの秀作。当時はベイリーの短編集を持っていなかったし、ほかに作品を探す能力もないので、これを翻訳することに決めた。
 ちなみに〈舞〉というファンジンが、まったく同時期(1983年)にこの作品を翻訳し、35号から37号にかけて連載していたことをあとで知った。考えることはみな同じである。

 さて、問題の翻訳は「地底潜艦〈インタースティス〉」の題名で中央大学SF研究会の正会誌〈BAGATELLE〉2号(1983年9月15日発行)に載った。訳者は林暁となっているが、じつは後輩が訳したものに当方が手を入れた。実質的な共訳である。
 弟(追記参照)にイラストを描いてもらったが、これが力作なので、参考までに載せておく。

2008-10-17(Interstice 2)


 ところで訳題だが、これには苦労した。“The Radius Riders”という原題は頭韻を踏んでいて悪くないが、どうにも日本語にならない。先述の〈舞〉掲載訳では原題のまま通しているくらいだ。けっきょく作品中で主役をはるガジェットの名前をとることにした。

 「地底潜艦」というのは「subterrene vessel」の訳語だが、これを「潜地艦」と訳さず、「地底潜艦」としたのが後輩だったのか、当方だったのか記憶にない。だが、「地底戦艦」と音が同じになり、語呂がいいではないかと思ったのは憶えている。

 ところが、これが仇になって、題名を「地底戦艦〈インタースティス〉」と誤記されることが多くなった。じっさい、正しい表記を見るほうが珍しいくらいだ。げんに多くの人が参照する書誌サイトにも誤記されており、このまちがいは今後も拡がるだろう。弱ったなあ。

 翻訳を〈SFマガジン〉に載せてもらえるようになって、この作品を持ちこんだ。ファンジンの該当ページをコピーしてわたしたら、当時の担当(阿)さんが気に入ってくれて、めでたく掲載が決まった。イラストも気に入ってくれたのか、やはり弟が描くことになった(下の図版参照)。(2008年10月17日)

2008-10-17(Interstice 1)


【追記】
 イラストレーターの中村亮のこと。当時はアマチュアだった。
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