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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.11.28 Wed » 『ヘンリー・カットナー傑作集』

 ついでにヘンリー・カットナーの傑作集 The Best of Henry Kuttner (SF Book Club, 1975) も紹介しておこう。ただし、当方が持っているのは、例によって同年にバランタインから出たパーパーバック版だが。

2008-10-4(Best of Kuttner)

 カットナーの弟子にあたるレイ・ブラッドベリが序文を書いている。ブラッドベリの師匠はリイ・ブラケットじゃないかと思う人もいるだろうが、そのブラケットもカットナーの弟子で、ふたりは同時期にカットナーの薫陶を受けていたのだそうだ。
 ブラッドベリによると、カットナーはたいへんな読書家で、当時の新潮流に目を配っており、キャサリン・アン・ポーターやフォークナーはもちろんのこと、ジョン・コリアのような初耳の作家を紹介してくれたのだという。

 収録作はつぎのとおり――

1 ボロゴーヴはムミムジイ
2 人造死刑吏
3 うぬぼれロボット *《ギャロウェイ・ギャラハー》
4 まちがえられた後光
5 銀河世界の大ペテン師
6 教授退場 *《ホグベン一家》
7 トオンキイ
8 小人の国
9 大いなる夜
10 ショウガパンしかない
11 金星サバイバル
12 冷たい戦争 《ホグベン一家》
13 さもないと…
14 Endowment Policy
15 住宅問題
16 ご入用の品あります
17 アブサロム

 このうち2、7、8、9、11、12、13、14、16がC・L・ムーアとの共作であることが現在では判明している。

 ラインナップを見てすぐに気づくのは、初期の怪奇小説や〈剣と魔法〉やスペースオペラ、あるいは後期のミステリがばっさり切られていること。それによって、ユーモアSF作家としての面が強調されている。まあ、フレドリック・ブラウンやロバート・シェクリイの先駆者という位置づけが、カットナーにとってはいちばんしあわせだろうから、これはこれで立派な見識である。

 とはいえ、ノスタルジーをぬきにして評価すると、わざわざ復活させるほどではないという気がする。9年ほど前にカットナーの作品を集中的に読みなおしたのだが、わりと失望することが多かったのだ。
 カットナーの作品はそつなくまとまっており、つねに高水準を維持しているが、突出する部分、あるいはゆがんだ部分がない。したがって、当時としては斬新だった形式が古びると、作家性に乏しい分、読みどころがなくなるのだ。時代と寝た者の宿命といえよう。(2008年10月4日)


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