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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.06.03 Sun » 『SFについて』読了

【承前】

 トマス・M・ディッシュのエッセイ集 On SF (2005) を読みおわった。ディッシュの毒にあてられて、すこしずつしか読む気が起こらなかった本である。

 この本は8割が毒舌、1割が称賛、1割が犀利な分析できできている。とにかく、相手がハインラインだろうが、レムだろうが、おかまいなしに喧嘩を売る姿勢は、ある意味で見上げたものだ。
 しかし、その毒舌はときに人を不愉快にさせる。たとえ、SFや文学に寄せるディッシュの愛情がいわせるのだとわかっていても。過激な阪神ファンの汚い野次が、ときに人を不愉快にさせるのと同じである。

 ところで、意外だったのは、ディッシュがグレゴリイ・ベンフォードの『タイムスケープ』を絶賛していること。前に書いたことがあるが、科学と科学者の両方をリアリティ豊かに描きだすことで、SF(観念)と文学(人間描写)を融合させるというこの本の方法論は、そういう概念自体がゆらいだ80年代にはすでに有効性を失っていた、というのが当方の見解。なぜ当方がディッシュのSF観に共鳴できないのか、これでわかったような気がする。

 蛇足。ディッシュという人は、誉める場合でも、なにかひとこといわずにはいられないらしい。たとえば、四部作の第二部にもかかわらず、ジーン・ウルフの『調停者の鉤爪』を手放しで称賛したあと、この本の装幀に文句をつけている。
 以下、大意要約――
 
「タイムスケープ・ブックスのペーパーバック版は、表紙がけばけばしくて、レジに持っていくのが恥ずかしいが、本そのものの造りはいい。対照的にダブルデイのハードカヴァー版はお粗末きわまりない。これだったら、著者の原稿をコピーして流通させたほうがましだ。ジーン・ウルフはもっとましな扱いを受けるに値する。そして一冊の本に10ドルを支払う人間も同じである」

(2008年8月7日)


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