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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.06.12 Tue » 『火つけのマッチ』

 例によって蔵書自慢。ものはレイ・ブラッドベリの Match to Flame: The Fictional Paths to Fahrenheit 451 (Gauntlet, 2006) である。限定750部のうち347番。ブラッドベリのサイン入りの豪華本。前に書いた送料36ドル(保険こみ)の本だ。

2008-6-11(Match 1)2008-6-11(Match 2)

 なんだか物騒なタイトルだが、副題にあるようにディストピアSFの名作『華氏451度』が完成するまでにブラッドベリが書いた同種のSFを集大成したもの。掲題ではあえて扇情的に訳したが、本来は「マッチから炎へ」くらいの意味だろう。完成作品は雑誌初出の形で(イラストも復刻して)、未完成作品はタイプ原稿の複写の形で、完成した未発表作品は活字で収録されている。雑誌黄金時代のものだけあって、復刻されたイラストはいずれも見応えじゅうぶんだ。

 例によってドン・オルブライトの編集で、いたれりつくせりの内容である。ちなみに、表紙のコラージュもオルブライト作。
 ブラッドベリの序文、ブラッドベリとリチャード・マシスンの往復書簡、ブラッドベリ学者トゥーポンスとエラーのエッセイにつづいてブラッドベリの作品がならべられている。そのうち邦訳があるのはつぎのとおり(追記参照)――

「火の柱」、「不死鳥の輝き」、「亡命者たち」、「第二のアッシャー邸」、「歩行者」、「ごみ屋」、「ほほえみ」

 さすがに黄金期のブラッドベリだけあって、逸品ぞろい。とはいえ、本書の目玉は『華氏451度』の原型ノヴェラ “The Fireman” と、その原型であるノヴェラ “Long after Midnight” だろう。後者については、著者の同題短篇とはまったくのべつもの。ブラッドベリという人は詩人肌なので、気に入った題名があると、平気でくり返して使うのである。書誌学者泣かせというほかない。(2008年6月11日)

【追記】
 のちに収録作の1篇が、「炉辺のコオロギ」の題名で短篇集『社交ダンスが終った夜に』(新潮文庫、2008)に訳出された。

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