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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.04.08 Mon » バドリスのこと

 アルジス・バドリスの作品は、アメリカSFのなかではかなり異質な肌合いがある。簡単にいってしまえば、ヒューマニズムを信じていない節があり、登場人物が冷めているのだ。キャリアが長く、玄人筋の評価が高いわりに、ちっとも人気が出ないのは、たぶんそれが理由だろう。

 わが国では『第3次大戦後のアメリカ大陸』(久保書店)と『アメリカ鉄仮面』(ソノラマ文庫)の2冊の長篇が出たが、広く読まれたとは思えない。むしろ〈F&SF〉掲載の短縮版が初期のSFマガジンに連載された「無頼の月」のほうが、幻の作品として関心をそそっているのではないか。いずれにしろ、知名度は低いと思われる。

 だが、短篇にはいいものがあって、このまま埋もれさせておくのは惜しい気もする。明らかに書きとばした作品も多くて、傑作にあたる確率は低いのだが、ときどき珠玉の短篇があるのだ。
 というわけで、傑作集の目次を考えてみた。題名、発表年、推定枚数の順で記す。

1 珊瑚礁にて '58 (55)
2 沈黙の兄弟 '56 (55)
3 すべては愛のために '62 (55)
4 隠れ家 '55 (40)
5 めぐりあい…… '57 (50)
6 夏の終わり '54 (70)
7 猛犬の支配者 '66 (75)
8 Be Merry '66 (130)

 1はファースト・コンタクトものの傑作。2は侵略もののホラーSF。3も侵略もので、異星人に支配された地球を舞台にレジスタンス活動が描かれるのだが、全然ヒロイックにならないところがバドリスらしい。4と5は《ガス》シリーズを構成する2篇で、特異な超能力もの。6は不死者の社会を描き、代表作のひとつとされている。7はSFではなくて、ヒッチコック好みのサスペンス。8は地球人に飼い殺しされている異星人たちの話。というのも、その血液から病気の特効薬が採れるからである。

 うーん。やはり陰々滅々としすぎているか。

蛇足。
 そのむかし鏡明氏が『アメリカ鉄仮面』を『二十世紀鉄仮面』と誤記して一部で話題になったが、これは小栗虫太郎経由による記憶の混濁が原因だろう。虫太郎には、そういう題名の作品が両方とも存在するのだ。(2008年6月5日)
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