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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.04.15 Mon » 『死なないやつもいる』

【承前】
 ケリー・フリースのイラストを売りにした《スターブレイズ・エディション》紹介3冊め、アルジス・バドリスの Smone Will Not Die (Donning, 1978) だ。

2008-6-4 (Some 2)2008-6-4 (Some 1)

 この本は来歴が複雑なので、ちょっと説明しておくと、もともとは〈ギャラクシー〉1954年3月号に発表された“Ironclad”という中篇が原型。
 これを書きのばして長篇にしたものが、まず False Night (Lion, 1954) として刊行されたが、バドリスの原稿を短縮したものだった。ちなみに、同書はペーパーバックで127ページである。このヴァージョンは『第3次大戦後のアメリカ大陸』(久保書店、1968)として邦訳が出ている。

 さすがに作者としては不満が残ったらしく、元の原稿を修復したうえ、新たに書き足したヴァージョンが、Some Will Not Die (Regency, 1961) として刊行された。こちらはペーパーバックで159ページ。以後はこのヴァージョンがリプリントされていて、《スターブレイズ・エディション》もその例にもれない。

 内容を簡単にいえば、疫病の蔓延で文明が崩壊したアメリカ東部を舞台にしたサヴァイヴァルもの。当時のアメリカのSFとしては、意外なほど暴力的で虚無的な物語が展開される。

 ついでながら書いておくと、冷戦の中期ごろまでは、細菌戦というのも核戦争なみにリアリティがあったらしく、英米の小説にはけっこう目につく。ところが、日本ではそれほどリアリティがなかったらしく(もちろん小松左京の『復活の日』という偉大な例外はあるが)、疫病ではなく核戦争で世界が滅んだと誤解されることが多い。読んだときに誤解しなくても、あとで記憶が改変されるのだろう。
 卑近な例でいうと、エドモンド・ハミルトンの「審判のあとで」という短篇を『反対進化』(創元SF文庫)に入れたとき、この誤解をしている人が多くてびっくりした憶えがある。彼我の想像力のちがいを見るようで面白い。(2008年6月4日)


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