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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.05.16 Thu » 『スターダスト・ハイウエイ』

 前にも書いたが、当方は1976年から1981年にかけて〈野性時代〉を毎月購読していた。角川書店が出していた総合文芸誌である。高校1年生から大学2年生のころであり、そこから受けた影響は多大なものがある。

 もちろん毎月のように載っていたSFが目当てだったのだが、買ったからには当然それ以外の部分も読む。おかげで読書の幅が随分と広がった。

 なかでも楽しみにしていたのが、片岡義男の作品である。のちに『スローなブキにしてくれ』、『人生は野菜スープ』、『波乗りの島』といった短篇集にまとめられる作品群だが、それ以上にノンフィクションに惹きつけられた。具体的に題名をあげれば「黒い流れから遠く」と「レッドウッドの森から」だ。どちらも自然を題材にしたエッセイであり、いまならネイチャー・ライティングと銘打たれるだろう。

 とにかく文章が恰好いい。それぞれの冒頭を引いてみよう――

「河口にあるその漁港の町に、明るい陽がさしていた。風が吹いていた。いつもよりひとまわりもふたまわりも大きく感じられたその町に、そのときぼくはなんの用もなく、ただ、いた。太平洋をながめ、陽の満ちた青い空をあおぎ、風に吹かれ、潮の香りを体のなかにとりこみ、港にびっしりとならんでいる漁船を見たりしていた。とても快適だった。」

「川に沿ってのぼっていった。透明さの極限をきわめたような、冷たく澄んだ川の水が、きれいな音をたてて流れていた。砲丸投げの砲丸を平たくしたほどの大きさの砂利が、川底にそして川原いっぱいに、広がっていた」

 翻訳調といってしまえばそれまでだが、このポキポキした感じ、ぶっきらぼうな感じ、乾いた感じが当時はとても新鮮だった。

 こういう文章をもっと読みたくて買ったのが、『スターダスト・ハイウエイ』(角川文庫、1978)だ。久しぶりに書棚から出してきたが、もともと古本だったし、何度か引っ越しを経験して、すっかりくたびれてしまっている。

2011-10-14 (Stardust)

 それでも、ページを開いて、何行か拾い読みすれば、目の前がパッと明るくなるような気がする。これぞ文体の功徳というものだ。

 本書には11の作品がおさめられている。そのうちの1篇は小説といってよく、3篇はレコード評。残りが広い意味でのネイチャー・ライティングといった構成である(上記2篇も収録されている)。 ちょっとジャンル分けに困る作品集だが、じっさい版元は困ったらしく、本書のどこにも「エッセイ集」とか「短篇集」といったジャンルを示す言葉は載っていない。

 ともあれ、自分がネイチャー・ライティングのたぐいを好んで読む根っこはここにあったのだなあ、と再認識したしだい。

 なんでこんなことを書いているかというと、ある人と話しているとき、〈野性時代〉の名前が出て、つい当時を懐かしむ気分になったからだ。まあ、ノスタルジーは年寄りの習いなので、大目に見てやってください。(2011年10月14日)



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