2013.03.31 Sun » 『ライバー年代記』
【承前】
海外に本を注文すると、まれに事故が起きる。じつは今回また郵便事故があった。注文から6週間たっても本が届かなかったのである。
注文のとき、通常なら4週間以内に届くはずだが、諸般の事情で遅れることがあるので、6週間たっても届かなかったら連絡をくれと説明を受けた。その6週間が過ぎたのだ。業者に連絡をとり、面倒な交渉の末、返金に応じてもらった。
こういうとき業者の対応は千差万別で、連絡しても梨のつぶての業者もいるから、今回はましな方だった。
ともあれ、すぐべつの古書店に同じ本を注文したのだが、驚くべきことに今日とどいた。注文したのが4月28日だから1週間。日米の郵便組織には不信感を持っていたが、こんどばかりは感心した。郵便屋さん、どうもありがとう。
というのも、連休のさなかに郵便配達の人がやってきて、郵便受けにはいらない巨大な荷物をとどけてくれたからだ。
問題の本は、マーティン・H・グリーンバーグ編のフリッツ・ライバー傑作集 The Leiber Chronicles: Fifty Years of Fritz Leiber (Dark Harvest, 1990) である。大きい本であることは知っていたが、いま計ったら、縦26センチ、横18.5センチ、厚さ3.9センチもある。当然ながら梱包も巨大かつ厳重で、箱をあけるだけでひと苦労した。
ともあれ、いちど手にはいりそこなった本なので、喜びもひとしおだ。

内容のほうは文字どおりの傑作集で、1939年のデビュー作「森の中の宝石」から83年の“The Curse of the Small and the Stars”まで全部で44の中短篇が収録されている。最初と最後が《ファファード&グレイ・マウザー》シリーズというのが、いかにもライバーらしい。
数が多いので題名はあげないが、このうち29篇は邦訳がある(追記参照)
もっとも、ライバーの存命中に出た本なので、序文とかコメントがついているかと淡い期待をしていたのだが、そういうものはいっさいなし。しょせん、グリーンバーグの編集した本なのであった。
この本をいままで買ってなかったのは、値段もさることながら、編者の名前からして付録のたぐいに期待が持てなかったから。収録作が傑作ぞろいなのは知っていたが、44篇中42篇はべつの短篇集で持っているから、食指は動かなかったのである。
ところが、ライバー傑作集を編む話が持ちあがり、残る2篇に目を通したくなったのだ。ひとつは46年発表の“Alice and the Allergy”という短篇。もうひとつは82年発表の“Horrible Imaginings”というノヴェラである。
前者は〈ウィアード・テールズ〉初出の古いホラー、後者はノヴェラということで、当方の傑作集に入れる可能性はほぼゼロだが、それでも目を通しておかないと、なんとなく落ち着かない。因果な性分である。
さっそく前者を読んでみたところ、レイプの被害にあった女性とアレルギーを結びつけたショッカー。発表当時はさぞかし衝撃的だったのだろうが、いまとなっては水準作。後者は165枚あることだけ確認した。これだと、いくら傑作でも、紙幅の関係で当方の編む傑作集には入れられない。
ともあれ、気分がすっきりしたので、心おきなく傑作集を編めそうだ。(2008年5月6日)
【追記】
この時点で未訳だった「『ハムレット』の四人の亡霊」と「春の祝祭」は、ライバー傑作集『跳躍者の時空』(河出書房新社、2010)に収録できた。
後者は大先輩、深町眞理子氏に翻訳を打診したところ、当方が用意した原文テキストを読まれたうえで応じてくださった。「大仰でいかめしい文体が面白い」との仰せであった。
この作品はライバーが60代なかばに書いた作品なので、それより若い翻訳者が訳すと、どうしても原文より若い感じになってしまう。深町氏の円熟の訳文が得られたのは、最大級の喜びだった。
海外に本を注文すると、まれに事故が起きる。じつは今回また郵便事故があった。注文から6週間たっても本が届かなかったのである。
注文のとき、通常なら4週間以内に届くはずだが、諸般の事情で遅れることがあるので、6週間たっても届かなかったら連絡をくれと説明を受けた。その6週間が過ぎたのだ。業者に連絡をとり、面倒な交渉の末、返金に応じてもらった。
こういうとき業者の対応は千差万別で、連絡しても梨のつぶての業者もいるから、今回はましな方だった。
ともあれ、すぐべつの古書店に同じ本を注文したのだが、驚くべきことに今日とどいた。注文したのが4月28日だから1週間。日米の郵便組織には不信感を持っていたが、こんどばかりは感心した。郵便屋さん、どうもありがとう。
というのも、連休のさなかに郵便配達の人がやってきて、郵便受けにはいらない巨大な荷物をとどけてくれたからだ。
問題の本は、マーティン・H・グリーンバーグ編のフリッツ・ライバー傑作集 The Leiber Chronicles: Fifty Years of Fritz Leiber (Dark Harvest, 1990) である。大きい本であることは知っていたが、いま計ったら、縦26センチ、横18.5センチ、厚さ3.9センチもある。当然ながら梱包も巨大かつ厳重で、箱をあけるだけでひと苦労した。
ともあれ、いちど手にはいりそこなった本なので、喜びもひとしおだ。

内容のほうは文字どおりの傑作集で、1939年のデビュー作「森の中の宝石」から83年の“The Curse of the Small and the Stars”まで全部で44の中短篇が収録されている。最初と最後が《ファファード&グレイ・マウザー》シリーズというのが、いかにもライバーらしい。
数が多いので題名はあげないが、このうち29篇は邦訳がある(追記参照)
もっとも、ライバーの存命中に出た本なので、序文とかコメントがついているかと淡い期待をしていたのだが、そういうものはいっさいなし。しょせん、グリーンバーグの編集した本なのであった。
この本をいままで買ってなかったのは、値段もさることながら、編者の名前からして付録のたぐいに期待が持てなかったから。収録作が傑作ぞろいなのは知っていたが、44篇中42篇はべつの短篇集で持っているから、食指は動かなかったのである。
ところが、ライバー傑作集を編む話が持ちあがり、残る2篇に目を通したくなったのだ。ひとつは46年発表の“Alice and the Allergy”という短篇。もうひとつは82年発表の“Horrible Imaginings”というノヴェラである。
前者は〈ウィアード・テールズ〉初出の古いホラー、後者はノヴェラということで、当方の傑作集に入れる可能性はほぼゼロだが、それでも目を通しておかないと、なんとなく落ち着かない。因果な性分である。
さっそく前者を読んでみたところ、レイプの被害にあった女性とアレルギーを結びつけたショッカー。発表当時はさぞかし衝撃的だったのだろうが、いまとなっては水準作。後者は165枚あることだけ確認した。これだと、いくら傑作でも、紙幅の関係で当方の編む傑作集には入れられない。
ともあれ、気分がすっきりしたので、心おきなく傑作集を編めそうだ。(2008年5月6日)
【追記】
この時点で未訳だった「『ハムレット』の四人の亡霊」と「春の祝祭」は、ライバー傑作集『跳躍者の時空』(河出書房新社、2010)に収録できた。
後者は大先輩、深町眞理子氏に翻訳を打診したところ、当方が用意した原文テキストを読まれたうえで応じてくださった。「大仰でいかめしい文体が面白い」との仰せであった。
この作品はライバーが60代なかばに書いた作品なので、それより若い翻訳者が訳すと、どうしても原文より若い感じになってしまう。深町氏の円熟の訳文が得られたのは、最大級の喜びだった。
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