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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.06.18 Tue » 『ブードゥー教の半魚人』

【承前】
 ロバート・E・ハワードのホラー短篇集としては、Black Canaan (Berkley, 1978) というのもある。

2011-10-5(Black 1)

 バークリーから刊行されていた折り込みポスター付きペーパーバックの一冊で、ネットにその画像があったので借りてきた。

2011-10-5(Black 2)

 まるでフランク・フラゼッタの絵のようだが、ケン・ケリーの筆になるものだ。ゲイアン・ウィルスンが序文を書いている。

 収録作は10篇で、そのうち表題作と“Moon of Zambebwei”が昨日紹介した本と重なっている。どちらもアメリカ南部を舞台にしたブードゥー教がらみの話である。
 邦訳があるのは表題作と「黒の詩人」のみ。ちなみに後者はハワードの未完原稿をオーガスト・ダーレスが補完したもの。前者の邦題はあんまりという気もするが、ソノラマ海外文庫がそういう題名にしたので仕方がない。

 表紙絵は“People of the Black Coast”という短篇を題材にしているのだが、これがハワードにしては珍しくSFといえそうな作品。というのも、表題の「ピープル」は、人間ではなく、ここに描かれている巨大蟹のことだからだ。なんと、この蟹は知性を持っていて、文明を築いているのである。

 物語は、主人公と女流飛行家である婚約者の乗った飛行機が、太平洋の孤島に不時着するところからはじまる。黒い岩石がひな壇上に積み上がった特異な地形で、見たところ無人島らしい。主人公はあたりを探検に行くが、帰ってくると婚約者の姿はなく、彼女の片手だけが残っている。
 その直後、主人公は馬よりも大きな蟹の群れに遭遇し、彼らが知性を持つ生物であることを知る。というのも、巨大蟹にはテレパシーがあるらしく、精神攻撃を仕掛けてきたからだ。その代わり、向こうの思考もぼんやりと読める。
 その結果わかったのは、蟹のほうが人間よりも進んだ文明を持っており、島の上部に都市を築いていることだった。ただし、その知性は人間とはまったく異質であり、彼らにとって人間など虫ケラ以下の存在でしかない。婚約者は、彼らの好奇心の餌食になったのだ。
 彼らにとって野獣である主人公は、婚約者の仇をとるため、彼らにゲリラ戦を仕掛ける。巧妙に立ちまわって何匹かを倒すが、しょせん多勢に無勢。やがて命がつきるだろう……。

 というわけで、「野生対文明」という図式はそのままに、怪物と人間の役割を逆転させた作品。ハワードらしいと同時にハワードらしくない珍品といえる。
 生前は未発表に終わり、〈スペースウェイ・サイエンス・フィクション〉1969年9-10月合併号に発表された。(2011年10月5日)

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