fc2ブログ

SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

2023.10 « 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 » 2023.12

2013.03.27 Wed » 『精神の魔女たち』

【承前】
 フリッツ・ライバー傑作集のために作品選びをするにあたって、ずっと頭にあったのが、ブルース・バイフィールドの評論 Witches of the Mind : A Critical Study of Fritz Leiber (Necronomicon Press, 1991) だった。ホッチキス製本で全76ページのパンフレットだが、内容はとてもいい。

2008-3-14(Witches)

 著者はライバーの活動を四期に分ける。すなわち――

ラヴクラフト期(1936-1949)
グレイヴス期(1949-1958)
ユング前期(1958-1974)
ユング後期(1975-present)

 の四つである。
 簡単に図式化すると、「ラヴククラフト期」はH・P・ラヴクラフトの影響のもとに怪奇小説の革新をめざしていた時代、「グレイヴス期」は、ロバート・グレイヴスの影響のもとに社会諷刺SFを書いていた時代、「ユング前期」は、ユング心理学、とりわけアニマの概念の影響のもとにSFと幻想怪奇小説の融合をめざした時代、「ユング後期」は、ユング派の神話学者ジョゼフ・キャンベルの影響のもとに、その試みを深化させた時代といえるだろう。

 おなじようなことを漠然と感じていただけに、これほど明快に語られているのを見て、すっかり得心してしまった。
 今回わりあい早い段階で初期の怪奇小説や50年代の社会諷刺SFを選択肢からはずしたのは、この本にあと押ししてもらったからだといえる。

 当方はライバーの偽自伝、つまり虚実ないまぜにして身辺雑記のように超自然の出来事を語る作品を偏愛しているのだが、それはバイフィールドのいう「ユング前期」と「ユング後期」に属している。そして58年発表の「跳躍者の時空」は、その転換点となった作品なのである。(2008年3月14日)

スポンサーサイト