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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.03.26 Tue » 『黒いゴンドラ船頭』

【承前】
 フリッツ・ライバーの短篇は本国でも入手しにくくなっており、ジョン・ペランとスティーヴ・サヴィルという人が中心になって、短篇集を編み直している。その第一弾が The Black Gondolier (Midnight House, 2001) だが、460部限定の豪華本であり、当方は03年に[e-reads]という版元から出た普及版トレードペーパーを買った。

2008-3-10(Black)

 ちなみに、ミッドナイト・ハウス版短篇集は、現在第三弾まで出ている。さらに余談だが、ジョン・ペランという人は、最近ホラー系のアンソロジストとして活躍している人で、その動向に注目しているところだ。

 さて、本書だが、ホラー寄りの作品18篇をペランの序文とサヴィルのあとがきで挟んでいる。これまで著者の単行本に未収録だった珍しい作品が何篇かふくまれているのが売りだろう。
 邦訳があるのは「レントゲン写真」、「蜘蛛屋敷」、「人知れぬ歌」、「電気と仲よくした男」、「死んでいる男」、「現代の呪術師」の6篇。

 いっぽう未訳の作品だが、表題作を筆頭に既出の作品が4篇ある。残った8篇のなかでいちばん面白かったのが“Mr. Adam's Garden of Evil”という短篇。共感呪術で特定の人間そっくりになる植物を栽培し、それをいたぶって楽しんでいる男が逆襲される話で、トワイライト・ゾーンの一話みたいなブラック・ユーモアである。
 まあ、落ち穂拾いの感は否めず、当方の編む傑作集に採りたい作品はなかった。

 また余談だが、本書にも大きなミスがある。目次に“The Lone Wolf”とある作品の本文ページを見ると、“The Creature from Cleveland Depths”というタイトルになっているのだ。こういうことになった理由は、何日か前の日記を読んでもらえばわかると思う。なんにせよ、普及版が出るとき直せなかったものか。

 さて、手持ちのライバー短篇集はこれで種切れ。とはいえ、前に紹介した Gummitch and Friends や、いろんなアンソロジーに散らばっている作品からも選んだので、当方の編む傑作集のラインナップを完全に明かしたわけではない。
 じつをいうと、本が厚くなりすぎるので、1篇落とせといわれているのだ。それでもうちょっと考えることにした。
 というわけで、持ってなかった本をいまアメリカから取り寄せているところ。本が届いたら、また紹介しよう。それとも、いいかげんウンザリでしょうか。(2008年3月10日)

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