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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.04.22 Mon » 『征服王コナン』

 誤解があるといけないので書いておくが、当方は「ハワードの原稿にはいっさい手をつけず、そのままの形で公刊しなければならない」と思っているわけではない。当然ながら、通常の編集作業は必要だし、その範囲内において改訂は許されると考える。

 ただハワードの場合、作家本人の了承を得ることが不可能なので、改訂は最小限にとどめるべきだと思うのだ。善かれと思ってやったことでも、思わぬまちがいを生むので。
 この点に関しては、当方も何度か苦い目にあっているので、書き手と編集者の双方が納得することが大事だと強調しておく。

 さて、この手の改訂は明記されないのが通例だが、ハワードの著作のなかではめずらしく、改訂の事実を編者が序文に記している例がある。世に名高いノーム・プレス版《コナン》シリーズ第1巻 Conan the Conqueror (The Gnome Press, 1950) だ。ハヤカワSF文庫版『征服王コナン』は、これの翻訳である。

2012-3-23(Conan the Conqueror)

 世界最初の《コナン》シリーズ書籍化。限定5000部のハードカヴァー。表紙絵はジョン・フォート。ヒロイック・ファンタシーや〈剣と魔法〉という言葉がなかったころなので、表紙には「サイエンス・ファンタシー」と謳われている。〈ウィアード・テールズ〉に連載された The Hour of the Dragon を改題したもので、シリーズ唯一の長篇である。

 序文で編者のジョン・D・クラークはつぎのように書いている。ここは重要なので原文を引く――

Very little editing was necessary or has been done. ......We don't think that Howard would have minded and we hope that you don't.

 この「最小限の編集」がどういうものかというと、誤字や文法上の誤りを正すといった必要不可欠の作業から、作中の辻褄の合わない部分を書き直すといった作業、さらにはシリーズに属すほかの作品と矛盾をきたさないよう語句を変更したり、文章を書き足したりといった作業にまでおよんでいる。

 今回このノーム・プレス版と、ハワードの真筆を謳っているデル・レイ版を綿密にくらべたところ、変更はおおむね許容範囲内だが、第12章に関しては「やりすぎ」の感が残ると判った。
 辻褄が合わないと判断したのだろうが、かなりの文章が削られ、その分ちがう文章が書き足されている。ハワードが見たらどう思うだろう、と考えてしまったのだ。
 まあ、その後L・スプレイグ・ディ・キャンプが行った大幅な改竄にくらべれば、問題にするほどではないのだが。

 もちろん伊達や酔狂で厳密なテキスト・クリティックをしたわけではない。創元推理文庫から刊行されている《新訂版コナン全集》第6巻のためである。
 じつは長篇 The Hour of the Dragon と、付録にするハワードの父親の手紙2通はすでに訳了して出版社にわたしてある。年内には刊行されると思うので、気長にお待ちいただきたい(追記参照)。 (2012年3月23日)

【追記】
 けっきょく年内には刊行されなかった。

 なお、当方が所有している本は高名なSF本のコレクター、代島正樹氏からのいただきもの。それを贈ってくださった経緯については稿をあらためる。乞御期待。


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