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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.03.17 Sun » 『人はみなひとりぼっち』

【承前】
 つぎはちょっと変わり種。You're All Alone (Ace, 1972) は、ショート・ノヴェル1篇に中篇2篇を合わせた作品集だ。

2008-3-2(You're)

 例によって目次を書き写すと――

①You're All Alone (325)
②Four Ghosts in Hamlet (105)
③The Creature from Cleveland Depth (140)

 題名のあとの括弧内の数字は推定枚数である。

 ①は未発表の長篇を雑誌掲載のため短縮したもの。問題の長篇は The Sinful Ones (1953) として刊行されたが、これは出版社によって大幅に改竄されるという不幸な目にあった。このときオリジナル原稿は失われ、のちに一部修復版が出ただけで終わった。
 簡単にいうと「宇宙は大がかりな人形劇場のようなもので、人に自由意思はなく、あらかじめ敷かれたレールにそって活動をつづけているだけ。しかし、そのレールからはずれてしまう人間もいて、彼らは人形たちの目には映らない。したがって、好き放題をしているのだが、こうした者たちのあいだにも権力闘争がある」という話。早い時期に人間疎外をあつかった作品といえる。いまならヴァーチャル・リアリティものになるだろう。

 ②は一種のゴースト・ストーリー。ライバーの父親が高名なシェイクスピア劇の俳優で、若いころは本人も父親の主宰する劇団で役者をやっていたのは有名だが、その体験を基にして書かれている。こうして虚実をないまぜにして、身辺雑記のように超自然的現象を語るというのは、ライバーがもっとも得意とするところで、当方はこれを「偽自伝」と呼んでいる。この作品はその好例である。

 ③は、題名を見るとモンスターの出てくる怪奇小説のように思えるが、じつは典型的な社会諷刺SF。核ミサイルを恐れて国民の多くが地下で暮らす時代。ティンクラーという便利な道具(定められた時間が来ると、振動刺激で着用者にそのことを知らせる機械)が発明される。だが、これが国民をコントロールする手段となって……という超管理社会ものである。

 当方が編む傑作集には、“Four Ghosts in Hamlet” を採ることにした(追記参照)。(2008年3月2日)

【追記】
 「『ハムレット』の四人の亡霊」という題名で無事に『跳躍者の時空』(河出書房新社、2010)に訳出できた。

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