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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.03.14 Thu » 『フリッツ・ライバーの第二之書』

 昨日紹介した本が好評だったのか、すぐに続編が出た。The Second Book of Fritz Leiber (DAW、1975) である。

2008-2-28(Second Book)

 造りはまったく同じで、フィクション6篇(うち書き下ろし2篇)、ノンフィクション5篇(うち書き下ろし1篇。大幅増補版1篇)がおさめられている。

 この本はノンフィクションに特筆すべきものがあるので、そちらについて先に記す。
 “Fafard and Me” は、前に触れたとおり、《ファファード&グレイ・マウザー》シリーズの裏話。ファンジンに発表された文章を増補したもので、そちらでは書かれなかった暗黒面についてもくわしく、非常に興味深い。
 「ブラウン・ジェンキンとともに時空を巡る」は、「科学をとり入れることで幻想文学に新生面を切り開いた作家」としてH・P・ラヴクラフトを捉えなおそうとする評論。師匠への敬愛と冷徹な分析が両立している力作で、邦訳はあるが、読んだことのある人はすくないだろう。残念。

 では、小説の題名をならべる――

①The Lion and the Lamb
②Trapped in the Sea of Stars  *《ファファード&グレイ・マウザー》書き下ろし
③ベルゼン急行  *書き下ろし
④Scream Wolf
⑤The Mechanical Bride  *TV台本
⑥A Deffence of Werewolves

 未訳作品について解説すると、①は銀河文明を背景にした宇宙SF。②はファファードとグレイ・マウザーが世にも奇怪な航海をする話。④は作者唯一の殺人ミステリ。⑤は人間そっくりの女性型ロボットをめぐるドタバタ。⑥は“Fantasy on the March”という題名で1948年にアーカム・ハウス発刊のリトル・マガジンに掲載されたもの。ストーリーのある小説ではなく、「幻想文学には、科学時代や機械文明にふさわしいシンボルが必要だ」と主張する演説である(余談だが、このなかに「狂気の山脈」という固有名詞が出てくる。クトゥルー原理主義者は、これも神話作品に入れるのだろうか)。

 ⑤については面白いエピソードがある。
 ライバーは49年に「飢えた目の女」という短篇を発表した。セックス・シンボルの登場を予言した優れた現代怪奇小説である。マーシャル・マクルーハンがこれを読んでいたく感心し、そのメディア論『機械の花嫁』でとりあげて称揚した。「もちろん、わたしはうれしかった。もっとも、マクルーハンの本の書評者たちは、無名作家の作品を引用していることに文句をいっていたが。犬どもめ!」とはライバーの弁である。
 さて、TV時代を迎えて、ライバーのところにも台本執筆の依頼がきた。ライバーはマクルーハンに感謝をこめて、彼の本と同じ題名の台本を書いた。しかし、TVドラマは制作されずに終わったのだった。

 集中ベストは「ベルゼン急行」。無駄なところがまったくない珠玉の短篇であり、最後の最後まで当方の編む傑作集の候補に残した。
 だが、作者が説明を一切しないので、注意深い読者でないと、結末にいたる幻想の論理を読みとれないだろう。ほかの作品との兼ね合いもあり、迷った末に収録は見送った。(2008年2月28日)

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