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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.03.11 Mon » 『フリッツ・ライバーの諸世界』

【承前】
 つぎはライバーの自選集 The Worlds of Fritz Leiber (Ace, 1976)。これも22篇収録の分厚い本だ。

2008-2-25(The World of)

 昨日紹介した傑作集を補完する意味あいがあったらしく、作品はひとつも重複していないうえに、ホラーや《ファード&グレイ・マウザー》シリーズにも目配りして、ライバーの幅広い作風を網羅した作りになっている。
 邦訳があるのはつぎのとおり――

「夢の卵」、「美女と五人の夫たち」、「変化の風が吹くとき」、「二百三十七個の肖像」、「パイプ・ドリーム」、「最後の手紙」、「あの飛行船をつかまえろ」、「おわり」。

 傑作集にくらべれば、やや落ちる作品がならんでいる。同じことは未訳作品についてもいえ、どうしても訳したい作品はない。強いていえば、妄想とも現実ともつかぬ形で「隣の異星人」を描いた“Waif”が、アニマ・テーマの作品群に連なるものとして興味深い。

 集中ベストは「あの飛行船をつかまえろ」だが、同じ河出書房新社から出ている年代別アンソロジー『20世紀SF④ 1970年代 接続された女』に入れたので、涙を飲んで見送り。再読して評価のはねあがった「二百三十七個の肖像」を当方の編む傑作集に採ることにする(追記参照)。

 余談だが、本書にはハインラインのジュヴナイルSFにオマージュを捧げた“Our Saucer Vacation”という愉快なパスティーシュがはいっている。ハインラインの文体を模写した明朗快活な宇宙SFだが、構図が逆転しているところがミソ。つまり七本の触手を持つ異星人(オクトパスならぬセプタパス)が、醜い未開人の住む星へ円盤に乗って観光にやって来るのだ。もちろん、その未開の星が地球というわけ。

 アダモヴィッチという地球人に正体がばれそうになったとき、主人公の父親は緑の小人に化けて金星人と名乗り、彼を円盤に乗せて嘘八百を教えこむのだが、そのなかにこんなくだりがある――

 むかしから金星人(あるいは悪い火星人)が地球人に身をやつして活動していた。たとえばプラトン、アリストテレス、クレオパトラ、黒太子、ロジャー・ベーコン、カリオストロ、マダム・ブラヴァツキー、アインシュタイン、エドガー・ライス・バローズ、グレタ・ガルボ、ピーター・ローレ、ベラ・ルゴシ、エドワード・テラー、ジェラルド・ハード、リチャード・シェイヴァー、ヒューゴー・ガーンズバック、マリリン・モンロー。

 一読して大笑い。もっとも、このおかしさは、いまの日本じゃ通用しないだろうな。(2008年2月25日)

【追記】
 残念ながら、本が厚くなりすぎるという理由で割愛を余儀なくされた。



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