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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.08.04 Sat » 『新作SF第3集』

【承前】
 昨日コリン・キャップのことを書いたら、「タズー惑星の地下鉄」は自分にとっても思い出深い、とコメントを寄せてくださった方がいた。こんなマイナーな短篇を好きな人が、当方以外にもいるとわかってうれしいかぎり。調子に乗って、つづきを書く。

 掲題の本は、ジョン・カーネル編集のオリジナル・アンソロジー New Writings in S-F 3 (Dobson, 1965) のこと。初版はイギリス版ハードカヴァーだが、当方が持っているのは同年にバンタムから出たアメリカ版ペーパーパックである。

2007-12-2(New Writing)

 この New Writings in S-F というのは、雑誌の経営に疲れはてたカーネルが、〈ニュー・ワールズ〉を手放したあとはじめたオリジナル・アンソロジー・シリーズ。64年からカーネルが亡くなる72年までに21集を数え、その後ケネス・ブルマーが跡を継いで78年の33集までつづくという人気叢書となった。
 60年代から70年代にかけてのオリジナル・アンソロジー・シリーズというと、デーモン・ナイト編の〈オービット〉ばかりが話題になるが、ニュー・ウェーヴに対抗するオールド・ウェーヴの拠点として、イギリスSF界をささえたこのシリーズの存在も忘れてはならないと思う。
 (その人気にあやかろうとしたのか、デイヴィッド・サットン編の New Writings in Horror and the Supernatural というシリーズが70年代の頭に出たが、こちらは2冊で打ち切られた。以上蛇足。)

 題名は〈ニュー・ワールズ〉と頭文字を合わせていると思われる。カーネルとしては、同誌を発展させたものという意識があったのだろう。もちろん、憶測にすぎないが。

 さて、前置きが長くなったが、第3集の巻頭を飾るのが、問題の「タズー惑星の地下鉄」である。裏表紙を見ると、この作品だけ題名が出ていて、本集の目玉だったことがわかる。

 例によって目次を書き写しておく――

タズー惑星の地下鉄  コリン・キャップ
The Fiend  フレデリック・ポール
Manipulation  ジョン・キングストン
Testament  ジョン・バクスター
夜のオデッセイ  ジェイムズ・イングリズ
ボールターのカナリア  キース・ロバーツ
Emereth  ダン・モーガン
Spacemaster  ジェイムズ・H・シュミッツ

 ちなみにポールの作品は〈プレイボーイ〉掲載作の再録。バクスターはオーストラリア人。のちに『ヘルメス 落ちてくる地獄』(角川書店、1981)を書く人である。

 この本は、いまは亡き東京泰文社で買ったのだが、なにより「タズー惑星の地下鉄」の原文が載っているのが魅力だった。
 同書を拾い読みしているときに見つけたのが、ロバーツの作品。これは気に入って、ホラーSFアンソロジー『影が行く』(創元SF文庫、2000)に訳出した。そういう意味でも、買ってよかった本なのである。(2007年12月2日)

【追記】
 のちに〈本の雑誌〉2008年11月号が、「車を捨てよ、本を読もう!」という特集を組んだとき、「SFに出てくる変わった乗り物を紹介してくれ」という依頼に応えて一文を草した。そこで大きくとりあげたのが、この「タズー惑星の地下鉄」だった。400字詰め原稿用紙にして6枚のエッセイの半分を無名の(隠れた名作というわけでもない)作品の紹介に当てたのだから破格もいいところだが、書いた本人は手応えがあった。ちなみに題名は編集部がつけたもので、「これぞ宇宙尺取り虫航法だ!」という。

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