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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.05.24 Fri » 『われらがベスト』

【前書き】
 以下は2007年11月18日に書いた記事である。誤解なきように。


 山岸真氏の日記によると、恒例になっている「今年のSFベスト5」にそろそろ投票しようと思って、依頼状についてきた参考資料を見た。そうしたら、氏の編訳書の項目にこう記されていたという――

ひとりっ子 グレッグ・イーガン 山岸融(編訳)

 じつは、このミスには当方も気がついていた。ひとつ上の項目が拙訳書『時の眼』で、当方の名前が出ているので、リスト作成者がまちがえたのだろう。
 しかし、フロイトの説を持ちだすまでもなく、この手のいい間違い、書き間違いは、当人の無意識を露呈したものと思ったほうがいい。要するに、われわれふたりはセットで認識されているのだ。

 まあ、似たようなキャリアで似たような仕事をしているうえに、共編のアンソロジー・シリーズまで出しているのだから無理はない。当方としては光栄のいたりだが、はるかに立派な仕事をされている山岸氏にしたら迷惑だろう。申しわけないかぎりである。

 さて、氏の日記を読んだら、フレデリッック・ポールが同じようなことをいっていたのを思いだした。
 周知のとおり、ポールは盟友C・M・コーンブルースと共作することが多かった。当然、混同されることも多かったのだろう。ポールいわく――

「ある批評家に紹介されたとき、彼はこういった。『あなたのラストネームは〝アンドC・M・コーンブルース〟だとずっと思っていましたよ』」

 上の文章は、ふたりの共作短篇ばかりを集めた傑作集 Our Best (Baen, 1987) の序文から引いた。

2007-11-18(Our Best )

 収録作は12篇。なかには未発表だった『宇宙商人』の幻のエピローグもふくまれている。邦訳があるのは「模擬砲」、「火星地下道」、「ガリゴリの贈り物」、「ある決断」の4篇。

 ポールの序文やコメントが抜群に面白い。アシモフやエリスンもそうだが、この手の雑文を書かせると天下一品だ。それが小説家としていいことなのか、悪いことなのかはわからないが。
 たとえば、『宇宙商人』が出たあと、書評に自作、あるいはコーンブルースとの共作がとりあげられるたびに、「この新作は、『宇宙商人』の水準にはおよばないが……」と書かれ、25年後には「この新作は『ゲイトウエイ』の水準にはおよばないが……」と書かれる、とこぼすあたりは吹きだしてしまった。

 この本は15年以上前に買ったのだが、雑文だけ読んでしまいこんでいた。今回せっかく本棚の奥から引っぱりだしてきたので、未訳の短篇をいくつか読んでみた。
 そのうちでは“Mute, Inglorious Tam”というのが出色。14世紀のイングランドを舞台に、サクソン人農奴の貧しく厳しい生活が描かれる。タムという男は、生活の苦しさを忘れるため、自力で動く車が空を飛び、星まで行くことを夢見るのだった……。
 SF作家のご先祖さまの肖像というところか。苦いながら、暗い情感をたたえた1篇である。(2007年11月18日)
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