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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.12.16 Sun » 『わが最愛のSF短篇』

 昨日紹介した本と同じコンセプトで、ひと足先に出たのが、マーティン・H・グリーンバーグ編 My Favorite Science Fiction Story (DAW, 1999)だ。じつはホラー編もあるのだが、そちらは持っていない。

2007-10-24(Favorite SF)

 まず目次を書き写してみよう。括弧内は推薦者である――

海を失った男  シオドア・スタージョン(アーサー・C・クラーク)
最後の指令  キース・ローマー(アン・マキャフリイ)
デイ・ミリオン  フレデリック・ポール(ジョー・ホールドマン)
小さな黒いカバン  C・M・コーンブルース(フレデリック・ポール)
ローマという名の島宇宙  バリー・N・マルツバーグ(マイク・レズニック)
ディアボロジック  エリック・フランク・ラッセル(アンドレ・ノートン)
人間の手がまだ触れない  ロバート・シェクリイ(アラン・ディーン・フォスター)
ブラック・チャーリー  ゴードン・R・ディクスン(ポール・アンダースン)
みっともないニワトリ  ハワード・ウォルドロップ(ハリー・タートルダヴ)
数理飛行士  ノーマン・ケイガン(グレッグ・ベア)
ロト  ウォード・ムーア(コニー・ウィリス)
失われたク・メルのバラード  コードウェイナー・スミス(ロイス・マクマスター・ビジョルド)
火星のオデッセイ  スタンリー・G・ワインボウム(L・スプレイグ・ディ・キャンプ)
コモン・タイム  ジェイムズ・ブリッシュ(ロバート・シルヴァーバーグ)
生と死の浜辺  ロジャー・ゼラズニイ(グレゴリー・ベンフォード)
『神経繊維』  レスター・デル・レイ(マリオン・ジマー・ブラッドリー) 
The Only Thing We Can Learn  C・M・コーンブルース(デイヴィッド・ドレイク)

 ファンタシー編とちがって、著名な作家・作品ばかり。固有名詞はすべてわかる。もっとも、それがいいことなのか、悪いことなのかはわからないが。

 補足しておくと、デル・レイの作品は邦訳のある長篇の原型となったノヴェラ版。ストーリーは同じだが、文章はだいぶちがう。
 未訳のコーンブルースの作品は、未来の考古学講義という形で太陽系を二分した星間戦争の顛末をスケッチしたもの。シュペングラー流史観のSF版で、題名は「われわれが歴史から学べるのは、けっして学べないということだけだ」というヘーゲル哲学からきている。

 後者を選んだのはデイヴィッド・ドレイク。1980年代にミリタリーSFの旗手のひとりだった人間にふさわしい選択だ。このように、この作家ならこの作品を選んで当然という例が多いが、逆に意外なとりあわせもある。

 その最たる例がスタージョンとクラークの組み合わせだろう。もっとも、「海を失った男」は、シチュエーションだけとれば「火星で遭難」というハードSF的なものなので、クラークにアピールしても不思議はない。クラークはこの作品にインスパイアされて「地球の太陽面通過」を書いたそうである。

 ついでに書いておけば、「デイ・ミリオン」と「小さな黒いカバン」の並びにはニヤリとさせられる。こういうのがアンソロジーの妙味なのだ。(2007年10月24日)

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