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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.08.20 Mon » 『宙ぶらりんの石』

 《シルヴァー・ジョン》の紹介をつづける。

 ウェルマンは晩年にこのシリーズの長篇を5作書いたが、当方はそのうち The Hanging Stones (Doubleday, 1982) というのを読んでいる。もっとも、当方が持っているのは、例によって84年にバークリーから出たペーパーバック版だが。

2007-9-8(Hanging)

 表題の「宙ぶらりんの石」というのはストーンヘンジのこと。ある大富豪が、観光客をあてこんで、アパラチア山地のティートレイ山にストーンヘンジのレプリカを作ろうとしている。その地には、もともと踵を下にして直立したような形のメガリス(巨石)があり、それがヒントになったらしい。

 ところが、この一帯には、ティートレイ山を聖地と崇める人狼の一族が隠れ住んでおり、彼らが聖地奪還に乗りだしたことから、騒動が持ちあがる。もちろん、たまたま同地を訪れていたジョンが、人間と人狼の抗争に巻き込まれるわけだ。

 面白いのは、英国のストーンヘンジ研究家の存在。この男は、ストーンヘンジを建設した新石器時代の人々と時空を超えて語らうことができ、ストーンヘンジの精霊を呼びだして、人狼族に対抗させるのだ。
 石器をふりかざして暴れまわる精霊たちが、じつに魅力的。当然ながら、精霊たちはストーンヘンジを冒涜する人間たちにも不快感を隠さず、味方としてはあまり当てにならないのがいい。
 
 恐ろしいはずの人狼も、じつは豚に似ている(表紙イラスト参照)という具合に、どこかすっとぼけた味がある。
 ついでにいうと、諷刺色の濃いのも特徴。地元の意向を顧みずに観光開発を進めることを戒めているのだ。丹念に描きこまれた風景ともども、アパラチア山地をこよなく愛した作者の心情が伝わってくる。(2007年9月8日)

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