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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.06.18 Mon » ブラッドベリとムニャイニ

 ジョゼフ・ムニャイニというイラストレーターは、『10月はたそがれの国』や『太陽の黄金の林檎』の挿画でわが国でもおなじみだと思うが、ブラッドベリがもっとも信頼を寄せていた画家である。その作風に自分と共通する資質を感じとったらしく、「精神的なシャム双生児」とまでいっている。

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 ふたりの出会いに関しては、サム・ウェラーによる伝記『ブラッドベリ年代記』にくわしいのだが、それによると、ブラッドベリが偶然ある画廊の前を通りかかったとき、ムニャイニのリトグラフが目にとまり、強い衝撃を受けた。すぐに画廊に飛びこんで、こんどはムニャイニの油絵を見せられ、すっかり惚れこんでしまったのだという。
 最初に見たのが「モダン・ゴシック」と題された幽霊屋敷風の建物を描いた絵。つぎに見たのが「キャラヴァン」と題された不思議な絵。どこへも行けない橋の上にカーニヴァル列車が停まっている絵だ。たしかに、どちらもブラッドベリ好みのモチーフが、ブラッドベリ好みの暗いタッチで描かれている。じっさい「キャラヴァン」は、のちに長篇『何かが道をやってくる』の霊感源になったらしい。

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 ブラッドベリはこの2枚の絵を購入したいと思ったが、先立つものがない。「モダン・ゴシック」のリトグラフを月賦で買うのが精いっぱい。そこでムニャイニにこう持ちかけた――
「もしこの絵が売れ残ったら、半額でぼくに売ってくださいませんか。どうせ半分は画廊のとり分なんでしょう。それなら、あなたをあざむくことにはなりません。画廊はあざむいたっていいんです。あいつらは金持ちなんだから、いい面の皮ってものですよ」
 2週間後、ムニャイニから絵は2枚とも売れ残ったと連絡があり、ブラッドベリはめでたく絵を手に入れた。だいぶあとになってわかったのだが、ムニャイニはその絵を個展から引っこめて、ブラッドベリにゆずったのだった。

上。ムニャイニとブラッドベリ。1960年代初頭に撮影された写真。ブラッドベリは1920年生まれ。ムニャイニのほうが8歳年上で、イタリア生まれとのこと。

下。ムニャイニの油絵。左が「キャラヴァン」で、右が「モダン・ゴシック」。

(2011年9月11日)

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