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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.09.20 Thu » 『リイ・ブラケット――アメリカの作家』

 SF作家の評伝にもピンからキリまであって、今回の本はキリのほう。ただし、これは飽くまでも外見/体裁の話であって、内容がキリというわけではないので、誤解なきように。

 ものはジョン・L・カーという人が書いたリイ・ブラケットの評伝 Leigh Brackett: American Writer (Chris Drumm, 1986) 。版元名を見ればわかる人はわかるだろうが、ファン出版の見本のような本である。
 いま計ったら、サイズは縦17.6センチ、横10.3センチ(大きめの手帳くらい)。ワープロのプリントアウトをそのまま版下にして、上質紙に印刷。ホッチキスで2箇所を留めて68ページの小冊子にしたもの。それでもISBNがついているから、立派な出版物である。

2007-1-27(Leigh)

 ジャック・ウィリアムスンの序文につづいて、著者の謝辞があり、本文がはじまる。本文は「背景」と「作家」の二部に分かれており、前者では作家になるまでの生い立ちが、後者では作家としての業績が主に記されている。
 SFだけではなく、探偵小説(ハードボイルド)、西部小説、映画/TVの脚本家としての活躍にも等分にページが割かれているのが特徴。これらのジャンルが、いずれも「アメリカ的」なものなので、本書の副題が生まれたのだろう。

 とはいえ、ブラケットが亡くなったあとのプロジェクトなので、本人の証言がとれなかったのが弱点。したがって、「これはわたしの推測だが」という断りが随所にはいる。著者もいうように、伝記としてはスケッチにとどまっている。
 しかし、ブラケットについてまとまった記事は珍しいので、たいへん貴重な資料であることはまちがいない。当方もずいぶんと勉強させてもらった。

 ところで、ブラケットがハリウッドに進出したきっかけは、最初の単行本『非情の裁き』(扶桑社ミステリー)をハワード・ホークスがたまたま読んで気に入ったからだとされている。それは嘘ではないのだが、著者によると、ブラケットは早くから映画脚本家を志し、ツテをたどってハリウッドでいろいろと働きかけをしていたらしい。
 じっさい、「三つ数えろ」の前に映画の脚本を一本書いているし(吸血鬼映画で、ちゃんとクレジットされている)、スター俳優ジョージ・サンダーズのゴーストライティングも経験している。それはクレイグ・ライスやクリーヴ・カートミルといった人とのつながりがあったからだが、そこにいたる人脈の話がじつに面白い。

 映画がらみで書いておけば、後年ロバート・アルトマン監督「ロング・グッドバイ」の脚本を書いたとき、高名な映画批評家のポーリン・ケイルに「パルプ作家あがりの脚本家に、こんなすばらしい会話が書けるわけがないから、監督と俳優がアドリブで作ったのだろう」と書かれて、ブラケットが激怒したという話も載っている。そりゃあ怒るわな(2007年1月27日)

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