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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.09.21 Fri » 『四次元立方体に囚われて』

【承前】
 SF作家の評伝でピンのほうといえば、デイヴィッド・ケッタラーの Imprisoned in a Tesseract : The Life and Work of James Blish (The Kent State University Press, 1987) があげられる。副題のとおり、ジェイムズ・ブリッシュの評伝。大判ハードカヴァーで400ページを超える大著である。

2007-1-26(Blish)

 ブリッシュは、いまでは《スター・トレック》のノヴェライズを書いた作家として名前が残るのみだが、かつてはハードSFの雄として鳴らした。この本は、ブリッシュのデビュー作から絶筆まで、すべてのSF小説に言及した大労作である。
 SF小説と断ったのは、パルプ時代の作家らしく、変名で冒険小説や探偵小説なども書いていたため。さすがに、そこまでは調査しきれなかったらしい。だが、これだけでも大変なものだ。

 著者はカナダの英文学教授。アカデミックなSF批評家としてはトップ・クラスで、この人が書いたカナダSF史の本も面白かったおぼえがある。本書も篤実というしかない仕事ぶりで、ブリッシュのSFすべてを(駄作としかいえない短篇までふくめて)丁寧に読み、全体像のなかに位置づけている。
 伝記の部分もけっこう面白くて、謹厳実直なイメージのあるブリッシュだが、若いころはかなり無茶苦茶をやっていたようだ。ヴァージニア・キッドとの結婚生活のくだりは、ゴシップ好きが喜びそうである。

 当方はブリッシュの代表作『悪魔の星』(創元SF文庫)が復刊されるにさいして解説を書いたのだが、そのときずいぶんとこの本のお世話になった。ケッタラーさんには足を向けて寝られないのであった。(2007年1月26日)



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