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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.11.12 Mon » 『カル』

【承前】
 最初に手に入れた《カル》シリーズの本は、Kull (Bantam, 1978) だった。序文をアンドリュー・J・オファットが書いている。
 面白いのは、表紙が折り込みになっていて、横長の絵を採用していること。ルー・フェックという画家の絵だが、この複製を10ドルで売っていたらしい。スキャンはしなかったが、申込先が右側に記載されている。

2006-11-3 (Kull 2)2006-11-3 (Kull 1)

 ランサー版とはちがい、未完の草稿は断片のまま収められているのが特徴。もっとも、カル王がブラン・マクモーンと共演する「闇の帝王」と、カル王は名前しか出てこないうえに、現代が舞台の秘境小説である掌編“The Curse of the Golden Skull” がオミットされているので、完全版というわけではない。その栄誉は、後者を収録したベイン版にゆずったわけだが、シリーズとしての一貫性という点では、この本のほうが優れている。

 さて、この本を買ったとき、真っ先に読んだのが、“By This Axe I Rule!”という短編だった。改稿されて、《コナン》シリーズ第一作「不死鳥の剣」(追記参照)となった作品として有名だったからだ。
 驚いたことに、王の暗殺にかかわる陰謀というメイン・プロットは同じでも、サブ・プロットがまったくちがっていた。
 つまり、魔術師同士を通した正邪の闘いという超自然の要素が抜け落ちているかわりに、若い臣下の恋愛物語が配されていたのである。それも、貴族と奴隷娘の身分ちがいの恋。肩すかしを食った気分だったのを憶えている。まあ、蛮人王のキャラクターは強烈だったので、それなりに楽しく読めたが、やはり「不死鳥の剣」のほうが格段に上である。
 ところで、この話はシェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」を下敷きにしているように思われる。登場人物のローマ名前は、そこから来ているのだろうか。(2006年11月3日)

【追記】
 この作品は《新訂版コナン全集》第5巻『真紅の城砦』(創元推理文庫、2009)に収録されている。

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