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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.10.03 Wed » ハネス・ボクの邦訳

 ハネス・ボクといえば、独特の画風で一部に熱狂的なファンを持つイラストレーターだが、メリットに私淑し、そのパスティーシュともいうべき小説を書いていたのはよく知られている。さいわい、代表的な長篇『魔法使いの船』(ハヤカワ文庫SF,1976)と『金色の階段の彼方』(ハヤカワ文庫FT,1982)はわが国にも紹介されている。だが、じつはこのほかにもボクの邦訳はあるのだ。

 〈バルーン〉という雑誌の創刊号(1979年9月)に掲載された「宝玉を求めて」という短編である。

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 これはボクの死後しばらくたってから発見された遺稿のひとつで、中華帝国をモデルにしたと思しい架空の国を舞台とする東洋幻想小説。メリットというよりは、メリメの匂いがする石像幻想譚である。
 訳者は上記二長篇を訳した小宮卓氏。氏は同じ号に「ハネス・ボク=ワンダーランド」という力のこもった紹介文も寄せておられる。けっきょく、ボクの紹介に情熱を燃やしたのはこの人ひとりだったわけだ。

 さて、この邦訳は海賊出版だったらしく、原題や初出の表記がどこにもない。参考までデータを記しておく。

Jewel Quest …… Kadath 1974, No.1

 〈カダス〉というのは、リン・カーターが出していたセミ・プロジン。カーターは晩年のボクと親交があり、その再評価に力を尽くした。上記二長篇もカーターがバランタインの〈アダルト・ファンタシー〉叢書に収録したおかげで、名前が知られるようになったのだ。
 ちなみに、この作品はカーターが編者を務めたDAWブックスの The Year's Best Fantasy Stories (1975)に収録され、多くの読者の目に触れるようになった。

 〈バルーン〉という雑誌についても書いたほうがいのだろうが、それはまたべつの機会に。(2006年10月24日)


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