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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.12.09 Sun » 『地球空洞説』

 ロスト・ワールドとか、地球空洞説とかいう言葉を聞くと、それだけで胸がワクワクしてくる。だから、この本が届いたときは仕事をほっぽりだして飛びついた。デイヴィッド・スタンディッシュというジャーナリストが書いたノンフィクション Hollow Earth (Da Capo Press, 2006) である。

2006-10-7(Hollow)

「地中にあるとされる想像上の異境、幻想的な生物、進歩した文明、奇蹟の機械にまつわる長く興味深い歴史」という長い副題からわかるとおり、地球空洞説の発生から現在までを丹念にたどった研究書。けっこう学術的な本で、トンデモ本のたぐいではない。

 章題を見れば、おおよその内容はわかるだろう――

1 空洞科学
2 シムズの穴
3 極地ゴシック――レイノルズとポオ
4 ジュール・ヴェルヌ――地質学の中心への旅
5 サイラス・ティードとコレシャニティ
6 空洞ユートピア、ロマンス、お子様向けの読み物
7 地球の核のエドガー・ライス・バロ-ズ
8 地球空洞説は生きている――邪悪なナチ、空飛ぶ円盤、スーパーマン、ニュー・エイジ・ユートピア

 ご覧のとおり、フィクションとノンフィクションが等価でとりあげられているのが特徴。とりわけ、いまは忘れられた地球空洞説に基づく小説を片っ端から紹介した6章は圧巻。プレSF史に興味がある当方としては、たいへん勉強になった。

 しかし、この姿勢が弱点になっている感は否めない。こういう題材は虚実の皮膜が薄いから面白いのであって、最初からフィクションだとわかっていると、それだけでワクワク感が減ってしまうのだ。
 題材からして読者を選ぶ本だが、この内容を喜ぶ読者はさらに限られるだろう。そのひとりであることを喜んでいいのやら悪いのやら……。(2006年10月7日)

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