FC2ブログ

SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

2019.06 « 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 » 2019.08

--.--.-- -- » スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2013.07.28 Sun » 小松左京傑作集

【前書き】
 去る7月26日は不世出のSF作家、小松左京の三回忌だった。故人を偲んで、訃報に接したあと書いた文章を公開する。


 小松左京が亡くなって以来、手もとにある本を片っ端から読み返していた。といっても、多くの本は田舎にあるので、再編集ものの短篇集が主である。それもひと区切りついたので、例によって傑作集を編んでみることにした。

 お断りしておくが、これは自分にとっての小松左京を再確認する作業であり、商業出版なら必要な配慮はいっさいしていない。あくまでもそういうものとして見ていただきたい。
 とはいえ、上限1200枚という目安をもうけた。無制限にすると百篇くらい選びそうなので、取捨選択の条件を厳しくしたのだ。そのほうが自分にとって面白いからである。

 配列は年代順。括弧内は推定枚数である――

1 御先祖様万歳  '63 (70)
2 お召し  '64 (60)
3 黴  '66 (75)
4 痩せがまんの系譜  '68 (45)
5 毒蛇  '71 (120)
6 結晶星団  '72 (185)
7 お糸  '75 (100)
8 ゴルディアスの結び目  '76 (120)
9 眠りと旅と夢  '78 (120)
10 雨と、風と、夕映えの彼方へ  '80 (80)
11 氷の下の暗い顔  '80 (180)

 合計1155枚。文庫なら700ページを超すが、最近ではざらにある厚さだろう。もっとも、電子書籍時代に突入すれば、こういう問題自体がなくなるかもしれない。

 こうして並べてみると、当方が小松SFになにを求めているかがよくわかる。
 このなかでひときわ目立つのは、6、8、10、11だろう。最新科学をバネにして「宇宙にとって人間とはなにか」という哲学的テーマを展開した小説である。まさにSFの醍醐味であり、小松SFの本道である。
 これらはハード・サイエンス寄りだが、おなじテーマをソフト・サイエンス(精神科学)寄りで展開したのが9だといえる。

 いっぽう時間SFの形式で「古き良き日本」を幻のように現出させる作品群は、小松SFのもうひとつの本道だろう(本道が何本もあるところが小松左京)。1、4、7がそれだが、とりわけ7は逸品。何度読んでもため息が出る。

 ところで、今回まとめて読み返して、小松作品が時代とずれていった理由がわかってきた。
 ひとつには、キャラクターよりも思索を重視した小説作法。もうひとつは、息の長い文章による流麗な描写。いずれも小松SFの美質だが、キャラ重視、一文一改行に象徴されるストーリーを運ぶだけの文章重視といった時代の趨勢と合わなくなったのだ。
 要するに、小松SFを楽しむための素養が現在の多くの読者には欠落しているわけで、よっぽどのことがないかぎり、小松SFが大衆的人気をとりもどすことはないだろう。残念ながら、そういう感想をいだいた。

蛇足
 小松左京が、いわゆる奇現象に肯定的なのに改めて気づいた。SFは、このいかがわしい部分を切り捨ててはいけないのだよなあ、と思ったしだい。(2011年8月16日)

【追記】
 徳間書店が出した追悼ムック『完全読本 さよなら小松左京』(2011)のアンケートに参加できたのは、身にあまる光栄だった。「あなたにとって小松作品のベスト1は何ですか」という質問に対して、当方は「お糸」をあげた。

スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。