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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.06.07 Thu » 『予感』

【前書き】
 以下は2006年4月11日に書いた記事である。誤解なきように。


 ちょうど1年前、ウェルズの『宇宙戦争』(創元SF文庫、2005)を訳していたのだが、そのとき参考のために買ったのが、デイヴィッド・シード編の評論集 Anticipations : Essays on Early Science Fiction and its Precursors (Liverpool University Press, 1995) だ。

2006-4-11(Anticipations)

 ウェルズ論というわけではなく、初期のSFに関する論文集で、編者の序論のほか、11人の筆者による論文がおさめられている。

 アカデミックな色彩の強い本だが、ブライアン・ステイブルフォードが〈インターゾーン〉に寄せた『フランケンシュタイン』論や、有力ファンジンである〈ファウンデーション〉に載ったブライン・ネリストの19世紀未来小説概論なども載っており、象牙の塔にこもっているわけではない。本書にかぎらず、イギリスSF界では非常に高いレヴェルでプロとアマが侃々諤々とやっている印象がある。

 お目当てだったのは、パトリック・パリンダーの「メアリ・シェリーから『宇宙戦争』へ――テムズ・ヴァレーの大災害」という評論。この場合のメアリ・シェリーは『フランケンシュタイン』ではなく、破滅ものの大作『最後の人間』の作者である。つまり、テムズ川の文化史的な意味の変容が、イギリスSFのお家芸である破滅ものを生んだのだというわけ。かなり説得力があり、その論旨は『宇宙戦争』の訳者あとがきに要約しておいた。

 つぎに面白かったのは、エドワード・ジェイムズの「ガス灯ぎわのSF――19世紀英語圏SF序論」。表題通りの内容だが、具体的な数字をあげて、実証的に論じているのが興味深い。そして結語には共感することしきり――

「『サイエンス・フィクション』あるいは『SF』という現代のレッテルにまどわされて、統一体のように思えるが、じつはそれは、それぞれの文学史と特徴をそなえた共通点のないサブジャンルの集合体なのである」

(2006年4月11日)


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