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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.01.07 Mon » 『恐怖小説百選 第二集』

【承前】
 とどいたばかりのスティーヴン・ジョーンズ&キム・ニューマン編 Horror Another 100 Best Books (Carroll & Graf, 2005) を読んでいたら、思うところがあったので書く。

2006-3-30(Horror Best 2nd)

 が、その前に本書の紹介をしておこう。
 これは作家や評論家を100人選んで、それぞれがベストだと思う作品についてミニ・エッセイを書かせるという趣旨で編まれたホラー・ガイド・ブック。1988年に同じコンビが編んだ Horror 100 Best Books の続編である。
 前著には書き下ろしだけでなく、エドガー・アラン・ポオがナサニエル・ホーソーンを論じた文章や、H・P・ラヴクラフトがロバート・W・チェンバーズを称揚した文章など、故人の文章もおさめられていて、そのアイデアに感心させられたが、今回はすべて書き下ろしである。88年以降に出た作品が21作とりあげられているのが嬉しい。
 その新しい作品の例をあげれば、『羊たちの沈黙』、『ナイト・フライヤー』、『グロテスク』、『殺戮のチェスゲーム』、『フロム・ヘル』、『アメリカン・サイコ』、『ロスト・ソウルズ』、『フリッカー、あるいは映画の魔』、『オフシーズン』、『紙葉の家』といったところだ。

 さて、編者たちは序文でつぎのような指摘をしている――
「大半の『書籍/映画/CD-Rom百選』は権柄ずくであり、煎じ詰めれば『注意を払うべき対象はこれらであり、ほかは無視してかまわない』といっているのだ」
「これらの〝お気に入り〟映画や書籍のリストは、5年以上前に発表された作品を読んだり、見たりしたことのない連中と、最近発表された作品には洟も引っかけない連中が選んでいるのだ」

 この指摘は傾聴に値する。つまり、ベスト選びはお遊びなのだ。個人の意見の表明という点では興味深いが、それ以上でも以下でもない。
 ところが、この手のベスト選びはえてして権威をまとってしまう。それ自体も問題だが、そこに選ばれなかった作品には価値がないという見解が生まれてしまう。その弊害のほうが大きいだろう。

 ジョーンズ&ニューマンが、前著でこぼれた(同等に優れた)作品を本書で拾い、さらには本書でもこぼれた作品を付録の年表で拾うようにしたのは、そういう意識のあらわれであり、この姿勢は大いに見習っていこうと思う。

 理由などは面倒くさいからすっ飛ばして、デジタルな結論(○か×か)だけを欲しがる風潮が強い昨今である。ベスト選びの危険性はますます強まっている。
 では、どうしたらいいかというと、名案は浮かばない。さて、どうしたものだろう。(2006年3月30日)

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