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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.02.09 Sat » 『回収アーティスト』

【承前】
 テリー・ビッスンをもう一冊。いまのところ最新長篇 The Pickup Artist (Tor, 2001) のことも書いておこう(追記1参照)。

2005-9-10(Pickup Artist)

 舞台は、アーカイヴの記憶容量の関係で、新しい芸術がひとつあらわれると、古い芸術がひとつ抹消されるようになった未来。表題の回収アーティストというのは、抹消されることになった芸術(の複製)を回収してまわる役人である。アートに関係する仕事だからアーティストなのだろう。

 主人公はそのひとり。芸術にはまったく関心がなかったが、あるとき回収したレコードを手元に残すことにしたため、歯車が狂っていく……。

 というわけで、典型的なディストピア小説。ブラッドベリの『華氏451度』の系譜である。
 じつは主人公の動きとはまったくべつのストーリー・ラインがあって、クライマックスで両者が融合するのだが、これがあまりうまくいっていない。
 ビッスンという人は、もともとプロット作りがうまい方ではない。拙訳のある2長篇(追記2参照)は、作品としては成功しているが、どちらもA地点からB地点への移動であり、そのあいだはエピソードの積み重ね。緊密なプロットは存在せず、エピソードの数しだいで長さはどうにでもなるタイプの作品。そういう意味では本質的に短篇作家なのだろう。
 
 ところで、この本は読んだときに紹介文を書こうと思って、ある雑誌に話をもちかけたら、「べつの人が書く予定がある」といって断られたのだった。けっきょくその人は書かなかったので、ちゃんとした紹介はされずに終わっている。こうして闇に葬られていく本は、どれくらいあるのだろう。(2005年9月10日)

【追記1】
 この後2012年になって、ようやく待望の長篇 Any Day Now (Overlook) が出た。

【追記2】
『世界の果てまで何マイル』(ハヤカワ文庫SF、1993)と『赤い惑星への航海』(同前、1995)のこと。


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