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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.02.08 Fri » 『謹啓』

【前書き】
 以下は2005年9月9日に書いた記事である。誤解なきように。


 テリー・ビッスンの最新短篇集 Greetings (Tachyon, 2005)を読んだ。2001年から04年にかけて発表された10篇が収録されている。

2005-9-9(Greetings)

 半分は初出時に読んでいたので予想はしていたが、「死」と「老い」をテーマにした作品が、これでもかこれでもかとつづく。ビッスンの作品でいえば、「冥界飛行士」や「マックたち」の系列ばかりを読まされる感じ。ユーモアを期待する人は、手痛いしっぺ返しを食うだろう。

 もちろん作品自体は高水準だが、こう暗いトーンの作品ばかりだと気が滅入ってくる。なかでも表題作の“Greetins”はすごい。人口問題と老人問題の行き着く末を描いたディストピア小説で、集中ベストだが、もっとも暗澹たる作品になっている。

 ベスト3を選ぶなら、ほかは時間旅行、ネアンデルタール人、過去からの手紙という題材で、ある女性科学者の孤独を浮き彫りにする“Scout's Honor” 、一種の死後譚を少年小説風に展開する“Almost Home” だろう。 

 最後の作品は、この短篇集には珍しい澄明感のある中篇なので、邦訳が出るにちがいない。
 ともあれ、ふつうならブラック・ユーモア調のドタバタになりそうな題材が、じつに生真面目に処理されているので、読むのがしんどい作品集であった。(2005年9月9日)

【追記】
 この短篇集からは、本文で題名を出した「謹啓」、「スカウトの名誉」、「ちょっとだけちがう故郷」の3篇に加え、ファースト・コンタクトものの佳作「光を見た」を訳出できた。すべて拙編のビッスン傑作集『平ら山を越えて』(河出書房新社、2010)にはいっている。ぜひお読みください。

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