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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.09.25 Tue » 『戦慄』

【前書き】
 以下は2005年8月24日に書いた記事である。誤解なきように。


 9月にハヤカワ文庫NVから新装版が出る『闇の展覧会』(1980)の第二分冊『罠』に解説を書いた。ホラー・オリジナル・アンソロジーの金字塔として名高い本だが、編者カービー・マッコリーが、同書の前に編んだ原型のような本がある。それが Frights (St.Martin's, 1976) だ。ただし、当方が持っているのは翌年にワーナー・ブックスから出たペーパーバック版である。

2005-8-24(Frights)

 じつは同書は抄訳が出ている。1977年にKKベストセラーズから刊行された『心理サスペンス』がそれだ。1987年に『恐怖の心理サスペンス』と改題のうえワニ文庫に収録されたので、こちらでご存じの方が多いかもしれない。

2005-8-24(心理サスペンス)2012-9-21(Wani)

 しかし、この本を抄訳といっていいか疑問が残る。全14篇のうち7篇(+フリッツ・ライバーの序文)しか訳されてないのはいいとしても、日本で2篇を勝手に追加したうえ、全体を怪奇実話のコラム風に改変してあるのだ。
 最たる例がロバート・ブロックの作品で、新作書き下ろしが売りなのに、その作品をはずして、40年近く前の「かぶと虫」という作品と差し替えている。さらに、かぶと虫の一人称で語られる物語を三人称に書き直し、長さを半分に縮めるという荒技。
 ついでに書くと「スカラブの呪い」という新しい題名でわかるように、問題のかぶと虫は古代エジプトのフンコロガシなのだが、イラストには日本のカブトムシが描いてあるのもすごい。

2012-9-21(scarab)

 とにかく原書のコンセプトとはまったく別物なのである。もうすこし詳しいことは解説に書いたので、そちらをお読みいただきたい。

 この抄訳もどきしか読んでいなかったので、これを機会に全体を原書で読んでみた。
 未訳作品のなかでは、幽霊屋敷を新しい感覚でよみがえらせたラッセル・カークの技巧的な中篇と、ヴェトナムを舞台にしたデイヴィッド・ドレイクの植物モンスター・ホラーがなかなかの出来。ジョン・ジェイクス&リチャード・E・ペックのノスタルジックな幽霊小説も悪くない。残りはジョー・ホールドマン、R・A・ラファティ、ロバート・エイクマンといった布陣。まともな形で邦訳が出なかったのは、つくづく不幸であった。(2005年8月24日)

【追記】
 書き忘れたが、日本で追加されたもう1篇は、マクナイト・マーマーの「嵐の夜」という短篇。〈ミステリマガジン〉1966年1月号に掲載された「あらし」の流用である(どちらも矢野浩三郎訳)。
 ブロックの本来の収録作「温かい別れ」は、短篇集『殺しのグルメ』(徳間文庫)に訳出された。


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